研究概要 |
我々は,有床義歯が真菌をはじめとする細菌の温床となり、誤嚥性肺炎などの疾病を予防すること目的として研究を進めてきた.本研究では改質剤表面への抗菌性の付与を目的として第4級アンモニウム塩の構造を有するシランカップリング剤N-allyl-N-decyl-N-methyl-N-trimethoxysilylpropylammonium iodide(10-I),N-allyl-N-methyl-N-trimethoxysilylpropyl-N-octa- decylammonium iodide(18-I)を合成,開発し,これら改質剤の生体為害作用の有無を細胞毒性試験により検討した. 合成した各化合物は1H-NMRスペクトルでは,ピークの積分比が目的生成物の各スペクトルと一致し, FT-IRおよび質量分析においても生成物が目的化合物であることを裏付ける結果が得られた.細胞毒性試験では,10-Iにおけるコロニー形成率はブランクコントロールに対して低下はなく,細胞毒性は認められなかった.一方,18-Iは濃度依存的にコロニーの形成を阻害し,中程度の細胞毒性を有することが示された. A. viscosus,F. nucleatum,L. casei,P. gingivalisおよびP. intermediaの5菌株に対する最小発育阻止濃度(MIC値)は各々200 ppm,一方,C. albicans,S. aureusおよびS. mutansのMIC値は400 ppmであった. また,抗菌活性において10-I処理面の生菌数の減少率は,6.2×107 CFU/mlでは56.5%,1.1×105 CFU/mlでは67.1%,1.1×104 CFU/mlでは92.5%であり,減少傾向を示した. 以上の結果より,10-Iおよびその処理表面は,カンジダ菌を含む他の口腔細菌にも有益な抗菌作用を示した.
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