研究課題/領域番号 |
23792258
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
新保 秀仁 鶴見大学, 歯学部, 助教 (40514401)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 抗菌性 / 熱可塑性樹脂 |
研究概要 |
口腔内での可撤性義歯の使用により,細菌の付着,繁殖が生じることは避けられないため,化学的洗浄,機械的洗浄に依存しているのが現状である.義歯自体に抗菌性を持たせ細菌の付着を減少させることは絶対的に必要なことと考えられる.近年,義歯床用材料として急速に普及している熱可塑性樹脂材料は理工学的な性質から一般的に利用されているアクリルレジンと比較して,化学的な洗浄および物理的な洗浄により劣化を招きやすいことが示唆されている.本研究は熱可塑性合成樹脂によって製作された義歯に付着する口腔内常在菌の様相を解明し,抗菌性を伴う新しい熱可塑性合成樹脂を開発する.抗菌性の検証:本研究に使用する抗菌物質である水溶性銀イオンBiosure(抗菌化研株式会社)は液状タイプと粉末タイプが存在する.まず抗菌性の均一化を実証するために分液タイプのアクリルレジンを使用した.液状タイプにおいてはアクリルレジンモノマーに混和することにより,容易に均一性を確立することができるものの,重合後のアクリルレジンは銀イオンの溶出により黒変し,本来の性質を著しく阻害する結果であった.しかし,粉末タイプをアクリルレジンのポリマーに混入することにより,色調変化は認められなかった.抗菌性の均一性に関しては自動遊星攪拌機を用いることにより,SEM像からも均一性を確認した.現在は均一に混和された抗菌性物質を含む,アクリルレジン板上でCandida albicansを培養し,蛍光試験およびコロニー数により細菌量を検証している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究に使用する抗菌物質である水溶性銀イオンBiosure(抗菌化研株式会社)は液状タイプと粉末タイプが存在する.まず抗菌性の均一化を実証するために分液タイプのアクリルレジンを使用したが,重合後にアクリルレジンが黒変してしまったため,粉末タイプにより抗菌性を確認することとした.しかし,ポリマーと粉末タイプを混和するため,抗菌剤の均一性が確立できないため,自動遊星攪拌機を使用し,均一性を確認した.そのために利用した自動遊星攪拌機が当大学既設ではないために,検証が遅れたと考える.
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今後の研究の推進方策 |
水溶性銀イオンの配分量を決定する:現在はメーカー指定に従い重量%で1,5,10 %に変化させ,混和している.抗菌性を示し,アクリルレジンの理工学的性質を変化させない混和量を検証する.均一に混在されたアクリルレジンを使用し,口腔内常在菌であるStreptococcus mutans,Streptococcus sanguis,Porofyromonas gingivaris,Prevotella intermedius,Candida albicansを培養,抗菌性を検証する.アクリルレジンによる抗菌性の確立後,熱可塑性樹脂に混和予定.熱可塑性樹脂への混和は業者委託し,アクリルレジン同様に抗菌性の検証を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
抗菌性検証のためアクリルレジンにて試料片を製作予定.また,熱可塑性樹脂への混和は業者委託のため,研究費が必要となる.また理工学的検証としてサーマルサイクルによる耐久試験を行うため,機器が必要となる.細菌培養試験に使用する菌株やシャーレ等の消耗品も必要となる.また海外および国内での学会報告予定.国際学会での発表を予定していたが,学会開催所での天候によるトラブルにて渡航が出来なかったため,計上した旅費が未使用となり,次年度に繰り越した.
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