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2011 年度 実施状況報告書

下顎運動を反映した顎義歯の咬合とその機能に関する検討

研究課題

研究課題/領域番号 23792261
研究機関愛知学院大学

研究代表者

宮前 真  愛知学院大学, 歯学部, 講師 (10340150)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード顎義歯 / 咀嚼能力
研究概要

下顎顎義歯装着患者を対象として,咀嚼能力に関与する因子を明確にすることで,補綴治療の指標および,術後の機能回復の目安を得ることを目的とし,関連諸条件を明確にすることを目的に研究を遂行した. 被験者は,愛知学院大学歯学部附属病院顎顔面補綴科診療部で補綴治療を行い,研究の主旨に同意が得られた下顎顎義歯装着患者25名である.客観的咀嚼能力評価として2種類の試験食材を用い,検査用グミゼリーによる咬断能力および,ワックスキューブによる混合能力を測定した.さらに,摂食可能食品アンケートによる咀嚼スコア,デンタルプレスケールによる咬合接触点数を測定し,性別,年齢,咬合支持域数,下顎の欠損形態,対向関係,舌欠損および再建状況,顎偏位の有無を評価項目に加え,咬断能力を目的変数として統計解析を行った.統計解析は,PASW Statistics 18.0 を用いPearson の相関係数,Spearman の順位相関係数を算出し,強制投入法による重回帰分析を行った. その結果,1.Pearson の相関関係,Spearman の順位相関において,咬合接触点数,咬合支持域数,年齢,性別,欠損形態,対向関係は,咬断片表面積増加量に対して高い相関関係が認められたことから,これらが咀嚼能力に影響を及ぼしていると考えられた.2.重回帰分析の結果から,咬合接触点数および咬合支持域数が咀嚼能力に強く影響を与え,それらが増加することで咀嚼能力が向上し,下顎顎義歯装着患者の客観的咀嚼能力の評価に有用であることが示唆された.今後は,被験者数を増やすともに,欠損形態等をさらに細かく分類して検討する必要があるものと判断された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は,患者個々に特有の下顎運動を反映した咬合の構築法を確立する事,およびどのような咬合因子が咀嚼機能にとって最も重要であるのかを明確にすること,また,上顎骨欠損において関節窩が欠損している場合も相対する下顎頭の運動は特有な様相を呈するものと考えているので,それらについても詳細を明らかにすることを目的としている. そこで,平成23年度の研究計画として,現状の顎義歯装着者の咀嚼機能に関する因子を抽出をすることを研究目標として掲げているが,研究実績の概要にも示した通り,下顎顎義歯装着者の咀嚼能力評価として,各種主観的評価および客観的評価を実施した,その評価結果および統計学的手法を用いた解析結果から,下顎顎義歯装着者においては,咬合接触点数,咬合支持域数,年齢,性別,欠損形態,対向関係が咀嚼能力に関する因子として抽出された.このことから,これらの因子が,この種の症例における咀嚼能力に関する指標のパラメータとして活用されることが示唆された.中でも咬合接触点数,咬合支持域数および対向関係は,補綴治療において変化させることが可能であることから,咀嚼能力を向上 させる因子として期待できる. 以上より,現時点での研究の進展と,研究目的を遂行するために,当初掲げた研究実施計画とを比較しても,本研究はおおむね順調に進展しているものと,自己評価している.

今後の研究の推進方策

現在までに,下顎顎義歯装着者における咀嚼能力に関する因子の抽出に一定の成果が得られたと考えられるが,出来れば,被験者数を可及的に増加することから,より大きな集団から,咀嚼能力に関する因子の検討が必要と考えている.また,研究目的に示したように,下顎骨欠損のみならず上顎骨欠損症例に関しても同様に,咀嚼能力に関する因子の抽出を遂行したいと考えている.それらの結果から,この種の症例に関する顎補綴治療における指標を構築することを予定している. また,本学術研究助成基金助成金で購入したアルクスディグマIIを用いて,下顎顎義歯装着者の下顎運動および咬筋・側頭筋の筋電図測定を実施するが,健常者の下顎運動も併せて測定し,検査項目におけるパラメータを確立することから,この種の症例に特徴的な運動様相を明確にする.さらに,特に試験食材の咀嚼時における運動様相解析を実施する予定であるが,このことからより統合的な咀嚼能力に関する分析が可能であるものと期待している.

次年度の研究費の使用計画

次年度の研究費の使用計画としては,そのほとんどが,研究遂行に必要な,特に下顎運動や咬合力測定に関する消耗品として考えている. また,現在までの成果発表として,10th Biennial Meeting of the International Society for Maxillofacial Rehabilitation(October 27-30,2012, Baltimore, USA) にて発表予定であり,研究費の一部を外国旅費として使用予定である.

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (14件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 支台歯周囲歯肉溝内における歯周病関連細菌に関する検討2011

    • 著者名/発表者名
      宮前 真,尾澤昌悟,吉岡 文,浅見和哉,岡崎祥子,岡本樹一郎,竹内一夫,村上 弘,田中貴信,服部正巳,石上友彦
    • 雑誌名

      顎顔面補綴

      巻: 34( 1 ) ページ: 8-13

    • DOI

      ISSN:03894045

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 分光光度計を用いた内部彩色における色調の分析について2011

    • 著者名/発表者名
      吉岡 文,重盛登世,岡崎祥子,浅見和哉,宮前 真,平井秀明,松川良平,ミシュラ・マニーシュ,尾澤昌悟,服部正巳,田中貴信
    • 雑誌名

      顎顔面補綴

      巻: 34( 1 ) ページ: 14-19

    • DOI

      ISSN:03894045

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 下顎顎義歯使用患者の咀嚼能力の回復に影響を及ぼす因子2011

    • 著者名/発表者名
      浅見和哉,宮前 真,尾澤昌悟,田中貴信
    • 雑誌名

      顎顔面補綴

      巻: 34( 2 ) ページ: 21-27

    • DOI

      ISSN:03894045

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 地域高齢無歯顎者の全部床義歯使用状況および咀嚼機能について ─総合病院および福祉施設での口腔機能検査─2011

    • 著者名/発表者名
      山本公珠,長塚 明,竹内一夫,宇佐美博志,宮前 真,川村重雄,三原こころ,池戸泉美,村上 弘,服部正巳
    • 雑誌名

      老年歯科医学

      巻: 26( 3 ) ページ: 354-361

    • DOI

      ISSN:09143866

    • 査読あり
  • [学会発表] 下顎無歯顎にインプラント治療を応用した1症例2011

    • 著者名/発表者名
      宮前 真
    • 学会等名
      第41回公益社団法人日本口腔インプラント学会学術大会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2011.9.15.
  • [学会発表] 義歯の手入れ2011

    • 著者名/発表者名
      宮前 真
    • 学会等名
      平成23年度社団法人日本補綴歯科学会東海支部学術大会 市民フォーラム(招待講演)
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2011.10.01.
  • [学会発表] 顎骨欠損患者の顎義歯装着による咀嚼能力回復の検討2011

    • 著者名/発表者名
      浅見和哉,宮前真,尾澤昌悟,岡崎祥子,吉岡文,平井秀明,田中貴信
    • 学会等名
      日本咀嚼学会第22回学術大会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2011-10-30
  • [学会発表] 愛知学院大学歯学部附属病院における金属修復による歯冠補綴物に関する実態調査2011

    • 著者名/発表者名
      丹菊里衣子,山口大輔,岡田尚子,佐藤大輔,大野公稔,普山田宏成,宮前真,竹内一夫,村上弘,服部正巳,寺倉健
    • 学会等名
      平成23年度社団法人日本補綴歯科学会東海支部学術大会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2011-10-01
  • [学会発表] 無歯顎者から有歯顎者までを測定対象とした咀嚼能力検査用質問紙の試作2011

    • 著者名/発表者名
      竹内一夫,三原こころ,長塚明,川村重雄,宇佐美博志,山本公珠,宮前真,村上弘,服部正巳,寺倉健
    • 学会等名
      平成23年度社団法人日本補綴歯科学会東海支部学術大会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2011-10-01
  • [学会発表] 上顎左側中切歯欠損に対して骨移植によりインプラント治療を行った1症例2011

    • 著者名/発表者名
      山本公珠,阿部亜希子,宮前真,内藤宗孝,村上弘
    • 学会等名
      第41回公益社団法人日本口腔インプラント学会学術大会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2011-09-18
  • [学会発表] 低出力超音波パルスの温熱効果の検討2011

    • 著者名/発表者名
      李躍東,竹内一夫,宮前真,山口大輔,村上弘
    • 学会等名
      第41回公益社団法人日本口腔インプラント学会学術大会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2011-09-17
  • [学会発表] 血清と低出力超音波パルスが骨芽細胞様細胞の石灰化に及ぼす影響2011

    • 著者名/発表者名
      山口大輔,竹内一夫,宮前真,李躍東,服部正巳
    • 学会等名
      第41回公益社団法人日本口腔インプラント学会学術大会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2011-09-17
  • [学会発表] 全部床義歯装着者の唾液分泌量の評価に関する基礎的検討2011

    • 著者名/発表者名
      三原こころ,竹内一夫,長塚明,宮前真,山本公珠,川村重雄,宇佐美博志,村上弘,服部正巳
    • 学会等名
      日本老年歯科医学会第22回学術大会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2011-06-17
  • [学会発表] 口腔癌術後患者における上顎顎義歯の咀嚼機能評価2011

    • 著者名/発表者名
      浅見和哉,宮前真,尾澤昌悟,岡崎祥子,吉岡文,平井秀明,重盛登世,服部正巳,田中貴信
    • 学会等名
      第35回日本頭頸部癌学会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2011-06-10
  • [学会発表] 口唇口蓋裂症例の補綴治療におけるインプラント応用に関する検討2011

    • 著者名/発表者名
      宮前真,尾澤昌悟,吉岡文,浅見和哉,南克浩,夏目長門,竹内一夫,村上弘,服部正巳,田中貴信
    • 学会等名
      第28回日本顎顔面補綴学会学術大会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      2011-06-03
  • [学会発表] 下顎顎義歯装着者の咀嚼機能に関する因子について2011

    • 著者名/発表者名
      浅見和哉,宮前真,尾澤昌悟,岡崎祥子,吉岡文,平井秀明,坂根瑞,重盛登世,小島規永,服部正巳,田中貴信
    • 学会等名
      第28回日本顎顔面補綴学会学術大会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      2011-06-03
  • [学会発表] 上顎顎義歯症例における直接支台装置に関する実態調査2011

    • 著者名/発表者名
      木村尚美,吉岡文,尾澤昌悟,宮前真,岡崎祥子,平井秀明,坂根瑞,小島規永,重盛登世,浅見和哉,秦正樹,松川良平,山田康平,門田千晶,服部正巳,田中貴信
    • 学会等名
      第28回日本顎顔面補綴学会学術大会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      2011-06-03
  • [学会発表] 唇顎口蓋裂症例におけるインプラント治療に関する臨床的検討2011

    • 著者名/発表者名
      宮前真,村上弘,竹内一夫,上野温子,石川輔,佐橋清実,服部正巳
    • 学会等名
      社団法人日本補綴歯科学会第120回記念学術大会
    • 発表場所
      広島
    • 年月日
      2011-05-21
  • [図書] このインプラントなに? 他医院で治療されたインプラントへの対応ガイド2011

    • 著者名/発表者名
      宮前 真( 分担)
    • 総ページ数
      233
    • 出版者
      医歯薬出版株式会社( 東京)

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公開日: 2013-07-10  

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