最終年度は、前年度までと同様に引き続き至適培養細胞シートの作製を試みた。まずF344/Jclラットの大腿骨骨髄を用いた骨髄細胞シートの作製方法を改善し、効果的な細胞シートの確立に努めた。具体的には5週齢のラットの大腿骨を摘出し、骨髄を採取し、骨髄由来の付着性細胞を10%FBS、1%抗生物質添加αMEMにて培養した。7日後に継代し、1つのフラスコを前述の培地にアスコルビン酸、β-グリセロリン酸、デキサメタゾンを添加させたものに変更した。その後、2、3日置きに積層し、培養14日後にトリプシン-EDTAで処理しディッシュから剥離し、細胞シートを完成させた。その際、培養期間を延長させると剥離が容易に行える可能性が示唆されたため、培養期間を14日以外に21日、28日も設定し、細胞シートの性状について検討を行った。その結果、培養期間を28日にまで延長させるとシートの形状は安定するが、生細胞が減少する傾向が認められ、培養期間21日が適切な期間であることが示唆された。 研究期間全体を通じては本方法で作製した細胞シートをコラーゲンスポンジ上に設置後、12週齢F344/Jclラット頭蓋骨に骨窩洞を形成後、埋植し、骨新生状態について組織学的な評価を行ったところ、以下の結果を得ることができた。①埋植物周囲には炎症は認められず、生体親和性が良好であることが示唆された。②4週後においては埋植物の残存はみられず、吸収性に優れていることが明らかになった。③成長因子FGF-2を併用した場合は、コラーゲン単体またはコラーゲンと細胞シートのみを併用したものよりも骨新生が起こることが示唆された。
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