本研究は,弾性率の異なるインプラントをラット大腿骨に埋入しオッセオインデグレーション獲得後,インプラント体から直接伝達される荷重によって生じるインプラント周囲骨の動態を,マイクロCT,FEM を用いて三次元的に解析・定量することで,ストレスシールディング効果等を勘案したメカノバイオロジカルな観点から組織学的,力学的に評価することにより,インプラント体に望まれる適切な弾性率,機械的強度に関する科学的根拠を得ることを目的とする. Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金(TNTZ),Ti-Nb-Sn合金の加工を行い,実験に必要な試料の大きさに成形することに成功した.試料の大きさは,動物実験用に直径1mm,長さ2mmのシリンダー型ミニインプラントとし,さらに細胞実験のために直径10mm,厚さ1mmのディスク状とした.これら作製した試料の表面にリン酸カルシウムによるコーティングを施し,表面性状を変化させた.作製した試料をラット大腿骨に埋入し,純チタンとのオッセオインテグレーション能を比較・検討した.また,細胞実験では,ディスク上にて骨芽細胞を培養し,細胞の増殖能や骨分化メーカーの発現を検索した. これらの結果より,今回製作した低弾性を有するチタン合金インプラントは,純チタンと同程度の細胞毒性を有し,さらに動物実験において,純チタンと同程度,もしくは有意に生体骨との骨結合能は増加し,インプラント材料をはじめとする生体材料としての有効性が期待された.
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