潜在的に強力な骨形成能を持つBone morphogenic protein 2 (BMP-2) は骨再生療法の切り札として期待され、広く応用が検討されている。しかし、臨床応用には非現実的な程大量のBMP-2を必要とし、未だ広く普及するに至ってない。本研究は、生物実験と、進化的アルゴリズム(情報工学)を組み合わせたFeedback system control (FSC)を駆使し、数限りない組み合わせが考えうる複数の外的因子(無機元素など)を最適に混合し、最小限のBMP-2量で、最大限の骨芽細胞分化誘導能を引き出す、共活性複合薬創生の基礎を築くことを目的としている。FSCDは新技術である事から、幹細胞を効果的に分化誘導する手法は未だ確立されておらず、慎重な実験が求められる。申請段階では、実験期間短縮の観点から初期骨分化マーカーとして知られる初期ALPを適応度として使用する事を検討していた。しかし、その後の検討により同マーカーは複合薬探索に適していない事が明らかとなった。従って、実験計画を一部変更し、骨分化複合薬探索に最適なFSCDの確立をまず目指した。昨年度申請者らは、ALPの代わりに後期骨分化マーカーの石灰化を適応度として用いる事で、有望な骨形成複合薬の迅速な同定が可能である事を明らかにした。本年度は、同複合薬の分化誘導メカニズムの解明に取り組んだ。その結果、得られた複合薬は、一般的に使用されるBMP-2濃度の100分の1以下のBMP-2量にも関わらず、BMP-SMADシグナルを増強して骨芽細胞へと分化誘導している事が明らかとなった。また、頻用される骨分化因子(アスコルビン酸、βグリセロフォスフェート、デキサメタゾン)の組み合わせに比べ、優れた骨芽細胞分化誘導能を持つ事が明らかとなった。これらの成果は、第34回日本バイオマテリアル学会において発表された。
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