研究課題/領域番号 |
23792290
|
研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 かおり 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (00364373)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 生体材料 / 足場材料 / コラーゲン / 物性試験 / 架橋反応 |
研究概要 |
コラーゲンスポンジは、口腔組織再生を誘導する生体吸収性足場材料の中で細胞が増殖・分化するのに適した材料である。物性の向上、構造安定化のため作製過程でグルタルアルデヒド(GA)を用いた化学架橋を施すことが多いが、残留した未反応GAの生体為害性が懸念される。よって本研究では、GA代替として同等の架橋作用が期待される1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を用いてブタ皮由来のI型コラーゲン溶液をゲル化させ、凍結乾燥して得られたコラーゲンスポンジにEDC架橋を施し、その架橋度を測定した。架橋が導入されるとコラーゲン中のフリーアミノ基が減少することを利用し、コラーゲンの架橋率はフリーアミノ基の減少率で評価した。EDC濃度0.125,0.25,0.5,1.0%、架橋時間1,3,5日の架橋処理を施した結果、1.EDC濃度に依存して架橋率が増加していることが確認された。また、低濃度では架橋率にばらつきが見られ不安定な傾向があり、高濃度ほど架橋率の値が安定してくることが確認された。2.EDC濃度1.0%で1日架橋処理すると約60%程度の架橋率が得られることから、低いEDC濃度で長時間架橋するよりも高い濃度で短時間架橋する方が架橋効率がよいと考えられる。3.同条件で粘度測定も行ったところ、架橋率同様濃度に依存して粘度も上昇していることが確認され、架橋形成の促進が示唆された。粘度は8時間以内で平衡に達したことから、架橋もこの時間で完了している可能性が高いと推測される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の第一過程は、生体材料として機能的なコラーゲンスポンジの調製の確立をすることを目的としている。従来架橋剤として用いられてきた化学試薬のグルタルアルデヒド(GA)に代替して、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を用いることにより、GA同様の架橋効果を期待してコラーゲンスポンジを調製してきたが、吸光光度計によるフリーアミノ基の減少率の測定により、EDCの架橋を確認することができた。EDC濃度は0.125%~1.0%、架橋時間は1~5日間で架橋処理を行い、それぞれの架橋率を測定したところ、EDC濃度1.0%で1日架橋処理すると約60%程度の架橋率が得られ、それ以上架橋時間を長くしても急激な架橋率の上昇は認められないことから、高濃度で短時間の架橋処理が効率的なことが分かった。SEMによる形態観察では、コラーゲンスポンジとして必要な緻密な多孔性を有しており、形態学的にも適していることが確認された。以上のことから、コラーゲンスポンジとEDCとの調製についてはおおむね順調に進展していると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の第二段階の予定は、第一段階でEDC架橋したコラーゲンスポンジを用い、DDS(Drug Delivery System)としての有用性を立証するための実験を検討している。コラーゲンスポンジが治癒効果を有する足場材料として機能するためには、生体内で細胞成長因子を徐放し、細胞の増殖・分化を促進できなければならない。塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)や血管内皮増殖因子(VEGF)は、未分化間葉系細胞の増殖能を高めて血管や骨の新生を促進し、歯周組織の再生を誘導することが報告されていることから、今後の計画としては細胞成長因子をコラーゲンスポンジに滴下しながら担持させ、DDSとしての機能性を持たせる実験を進めていく予定である。EDC架橋したコラーゲンスポンジを用いる前の予備実験として、既に製品として販売されているコラーゲンスポンジを用い、細胞成長因子を担持させて培養を行い、その試料をパラフィン包埋して薄切、組織観察することで細胞の増殖・分化を確認する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
初年度は架橋試薬としてEDCを用いたコラーゲンスポンジの架橋率の最適条件を確立することに的を絞り、試薬の濃度や反応時間の調整に重点を置いた化学的研究を行ってきたが、次年度からは細胞を用いた生物学的研究に移行していく予定である。そのため研究費の大半を細胞株や細胞成長因子に充てることになる。また、細胞培養に必要な培養液、抗体、組織観察に必要な器具などを必要に応じて揃えなければならないため、次年度の研究費は細胞関連の消耗品に費やす予定である。
|