研究概要 |
本研究ではHAとTiを混合させた複合材料を圧縮せん断法によって作製し,その特性を明確にするとともに,この複合材料への培養骨芽細胞MC3T3-E1の接着・増殖性を検討した.圧縮せん断法により作製したHA分散Ti基複合材料の特性を解析した結果報告とし,この複合材料に対するMC3T3-E1細胞の接着・増殖性を細胞生物学的に検討して,HAの問題点と改善のための方向性を得たので下記に示す. 1.HAは圧縮荷重やせん断距離そして800℃では,その結晶特性に影響を与えなかったが,1100℃の焼結温度によって部分的な分解が認められた.2.EPMAの面分析から,1100℃で焼結されたHA分散Ti基複合材料表面には,HA主成分であるPの分布はHA体積含有率増加と一致したが,Ca分布は不一致であった.3. HA分散Ti基複合材料上のMC3T3-E1細胞の接着・増殖は,HA体積含有率の増加によって抑制された.この抑制作用に複合材料からの溶出成分の影響は認められなかった.HAの存在は,細胞からのO2-生成を減少させた.4.焼結温度500℃, 800℃のHAプレート上では,細胞は接着・増殖しなかったが,1100℃上には,細胞の接着・増殖が認められた. 本実験に用いたHAは細胞接着・増殖を抑制する作用を認め,焼結温度1100℃のHAから部分的な分解により生成された他の物質が,細胞の接着・増殖を促進する可能性が示唆された.アパタイトの性状によって,細胞増殖活性は全く異なる可能性が示唆された.それらを決定づける化学的・細胞生物学的な機序の詳細は未だ不明な点が多く,今後明らかにすべき研究課題と考えている.
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