研究課題/領域番号 |
23792298
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
辻村 麻衣子(羽下麻衣子) 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 講師 (60535219)
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キーワード | インプラント / 骨細胞 / 細胞・組織 / 歯学 |
研究概要 |
今日の歯科インプラント治療は、欠損補綴の選択肢として不可欠である。その成否は周囲の骨組織の状態と密接に関わっている。したがって、インプラント周囲骨における骨細胞や骨基質に関する情報は、インプラント治療が成功する上で必須の基礎的データになると考えられる。今年度は、インプラント周囲骨の生物学的安定性の検証のため、ラット上顎骨インプラント植立モデルを用いて、免疫組織化学的手法により、インプラント周囲骨の変化をさらに詳細に検討し、以下の結果を得た。 今年度は、骨細胞のマーカーであり、基質石灰化に関与するdentin matrix protein 1と骨芽細胞の活性を抑制するといわれているsclerostinについて、蛍光二重免疫染色を行い、染色を施した切片を共焦点レーザー顕微鏡下で2次元的および3次元的に検索した。その結果、インプラント周囲骨が活発なリモデリングにより新生骨に置換される過程で、両者に反応する細胞が多く認められた。また、組織のリモデリングに重要な働きをするmatrix metalloproteinase(MMP)2、MMP9、MMP13とMMPを阻害するtissue inhibitor of metalloproteinase 1の免疫染色を行った。その結果、いずれもインプラント周囲骨、とくにリモデリングが活発に行われている段階前後の周囲骨の骨細胞に陽性反応がみられた。これにより、昨年度の結果が検証され、インプラント周囲の骨細胞は骨基質の合成と分解にも関わり、骨リモデリングを局所的に調整している可能性が示された。 以上より、インプラント周囲骨において、骨細胞などの骨中の細胞は、窩洞形成後の骨リモデリングに深く関与し、インプラント植立後の治癒に関連していることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、昨年度と同様に免疫組織化学的手法を用い、インプラント周囲骨の経時的変化をより詳細に明らかにした。これまでの実験結果を考慮し、インプラント周囲骨の生物学的安定性の解明に有用と思われる実験を行い、昨年度の実験を進展させることができた。したがって、研究全体の進行はおおむね順調と考え、上記の判断をした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本研究の総括に向けて、これまでに得られた歯科インプラント治癒過程における骨中の細胞、特に骨細胞の動態と骨基質の変化をより明確にしていきたい。 さらに、別の視点で骨代謝機構を解明するために、免疫組織化学以外の手法も用い、インプラント周囲骨の性状を明らかにしたいと考えている。その際、現在所有している試料を有効に利用できるよう、随時計画を検討し、必要な実験を追加・変更しながら、研究を遂行する予定である。また、それに並行して、これまでの成果をまとめ、発表の準備を進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、上述のように、これまでの実験により得られた成果を考慮しながら、その後の実験を計画・遂行する予定である。今年度は、昨年度と同様の手法やそれを進展させた手法で研究を進行させたため、昨年度購入した器具および試薬を用いて行う実験が多かった。これにより今年度の研究費を来年度に持ち越す事になったが、来年度は、今年度までの結果を裏付け、総括できるように、新しい試薬や抗体を用いた実験を行いたいと考えている。そして、今年度繰り越した分も含めた研究費を用いて、その成果をまとめ、発表できるように、使用計画を組み立てている。
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