研究概要 |
歯周組織の再建療法は,現在,一部健康保険の適応となり一般的になりつつあるが,臨床適応は限られている。特に,歯周病により歯牙が喪失すると歯槽骨の吸収が著しく,その後の欠損補綴治療も困難となる。一方で,整形外科領域ではスキャホールドを用いた骨再建が一般的におこなわれており,歯槽骨でも同様の技術で再建されることが望まれている。本研究では,スキャホールドに用いられるハイドロキシアパタイトやβ-TCP表面と骨芽細胞の親和性を高める表面処理剤(バイオカップリング剤)を新規に合成し,骨芽細胞の細胞接着性と骨再生誘導能力を検討することを目的とし実験を行った。昨年度までに新規バイオカップリング剤5種(1,3-DAU6M,MI3M,AB6M,DI6M,TI9M)の合成に成功したので,今年度はこれらを用いてin vitroによる細胞接着性の評価とin vivoによる骨形成能の評価を行った。 バイオカップリング剤で表面を改質したガラス板を用いて細胞の付着性をルシフェラーゼアッセイにより評価したところ未改質群と比較しすべてのバイオカップリング剤処理群で有意に高い細胞の付着性を確認した。また1,3-DAU6MとAB6Mが特に高い細胞接着性が得られた。さらに,ディッシュ表面をバイオカップリング剤で処理したガラス製細胞培養用ディッシュを用いて,石灰化誘導培地でマウス骨芽細胞を培養し,ノジュール形成を評価したところ,AB6Mは短期間にノジュールが形成され,細胞の分化誘導能を促進した。 続いて,表面改質したβ-TCPを用いてマウス骨芽細胞-β-TCP複合材料を形成し,この試料を免疫不全マウスの皮下へ移植し,同細胞の骨形成を組織学的に検討したところ,β-TCP内に細胞浸潤は認められるが骨様組織の形成は認められず,線維種様の増殖が観察されたことから,細胞の癌化に伴い骨芽細胞能が失われた可能性が考えられた。
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