研究課題/領域番号 |
23792301
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
岡田 正弘 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (70416220)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | バイオセラミックス / ハイドロキシアパタイト / ナノ粒子 / ナノプロセス / 結晶性 / 細胞接着 |
研究概要 |
本研究課題は、新規な機能性歯科材料の創出を目指し、申請者が見出した「ソフトプロセス」により得られる低結晶性アパタイト透明体の構造制御と機能評価に関する検討を行うものである。このソフトプロセスとは、室温付近で作製した低結晶性アパタイトナノ粒子の水分散体を室温付近で乾燥させることでナノ粒子を集合化させる手法である。 平成23年度においては、低結晶性アパタイト透明体の構造制御のために、まず、アパタイトナノ粒子の作製条件について検討を行った。アパタイトナノ粒子は硝酸カルシウムとリン酸水素二アンモニウムを用いた湿式法によって作製した。この際、湿式法の条件を変化させることで40~300nmのナノ粒子の作製に成功した。作製したナノ粒子の粒子径および形態は走査型電子顕微鏡によって評価し、X線回折法によってその結晶構造を同定した。 次に、作製したナノ粒子分散液を各条件で乾燥させることで、透明ナノ粒子集合体を作製した。この際、ナノ粒子が小さいほど透明性が高くなることを見出し、また、ナノ粒子濃度を高くすることで透明体の面積を大きくすることが可能であった。ここで、透明体の電子顕微鏡観察から、得られた透明体には粒子間隙に由来するナノ気孔が存在することが明らかとなった。また、X線回折測定から、透明体は特定の配向性を持たないことが確認された。さらに、透明体の機械的特性を評価した結果、原料となるナノ粒子の粒子径が小さいほど強度が高くなることが明らかとなった。また、作製したアパタイト透明体をリン酸緩衝液中に浸漬した結果、透明体内部に存在するナノ気孔中に液体が浸潤することを見出した。 以上のように、平成23年度の検討によって、透明体形成に最適な低結晶性アパタイトナノ粒子の作製条件およびソフトプロセスの処理条件を明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の検討においては、透明体形成に最適なハイドロキシアパタイトナノ粒子の作製、および、透明体の形成条件を見出すことを目的とした。「9.研究実績の概要」に記載したように、当初の目的通り、湿式法およびソフトプロセスの諸条件を検討することで目的を達成したため、「(2)おおむね順調」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)低結晶性アパタイト透明体の構造制御:アパタイトナノ粒子の作製時に、陽イオン(マグネシウムイオン、亜鉛イオンなど)あるいは陰イオン(炭酸イオン、フッ素イオンなど)といった共存イオン種を加えることで、得られるアパタイトの組成を制御する。作製したアパタイトナノ粒子用いて、平成23年度の検討により最適化したソフトプロセスにより透明体を作製し、その構造および機械的特性を評価する。(2)生物学的特性評価:作製した各種アパタイト透明体上で細胞の初期接着性、および、細胞機能の発現(増殖、運動挙動、分化挙動)を評価する。ここで、対象とする細胞としては、アパタイトの認識性が高い骨芽細胞および間葉系細胞を主に扱う予定である。本研究で対象とする材料は透明であるため、染色することなく上記のような細胞挙動を経時的に観察することが可能である。得られた知見をもとに、透明体の物理的性質(アパタイトナノ粒子の粒径、表面荒さ、表面電位)と生物学的特性(細胞接着性、細胞増殖性、接着分子の発現、分化マーカーの発現)の関係を導き出し、細胞機能発現に係るナノ構造の一般法則について明らかにする。 以上の結果をもとに、アパタイト透明体の構造制御を達成し、機能発現に係るナノ構造の一般法則を明らかとすることで、新規な機能性歯科材料の創出を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、低結晶性アパタイトナノ粒子および透明体の作製、ならびに、アパタイト透明体上での細胞挙動の評価に係る消耗品費を中心とする。 次年度に使用する予定の研究費がある(「収支状況報告書」の「次年度使用額」の合計欄が0円以外である)が、これは、東北地方太平洋沖地震の影響によって、参加予定であった国内学会への参加を中止ししために当該研究費が生じたものである。また、当初予定していたナノ粒子の組成評価を代替法で評価可能としたことで、設備備品費の減額も生じた。 研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での課題等は現時点ではない。
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