Ti-OHはアパタイトの核形成を誘起することやアナタース構造のTi-OH基は高いアパタイト形成能を示すこと、また、骨類似アパタイトの形成メカニズムはOH基に先ずCa2+が吸着し、さらにそこにHPO42-が吸着することで骨類似アパタイトが形成することが知られている。そこで、骨類似アパタイトの核形成を誘起する官能基を表面に形成させれば、骨類似アパタイト層が形成されやすくなることが予想され、本研究では、TNTの低次元ナノ構造体のバイオテクノロジーへの応用展開を視野に入れ、TNTの内外表面へのCa修飾および徐放性を検討した。低温化学合成法によりチタニアナノチューブを作製し、作製したTNTをC6H10CaO6 を溶解した水溶液に浸漬し、24時間攪拌還流を行いCa2+ドープのTNT(Ca-TNT)を作製した。 Ca-TNTにおける構造解析と表面Caの定量をTEMおよびEDSにより行い、次に全Ca吸着量をICP発光分光分析装置にて測定した。そして、 数時間毎にイオンクロマト分析により定量測定し溶出試験を行った。 TEM写真では直径8nm、長さ約200nmのナノチューブが形成されていることが確認できた。EDSではCa-TNTの中腹で約5 atom% のCaが検出された。また、Ca-TNTに110000 μg/gのCaが吸着しており、16時間後には16145 μg/gのCaが徐放された。TNTには多量のCaイオンが吸着することがわかり、また、微量ではあるが徐放性もあることがわかった。生体材料への応用展開が期待でき、今後In-vitro試験も検討していく。また、異なるイオンドープ種の検討により新機能生成の可能性も期待できる。
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