研究課題/領域番号 |
23792304
|
研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
中塚 隆介 関西医科大学, 医学部, 助教 (90454561)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 再生歯学 / 歯髄幹細胞 / 細胞外環境 |
研究概要 |
常生歯形成端では、Notch 受容体の発現が高いといわれているため、Notch受容体と関連する分子の遺伝子発現が間葉系マーカー(PDGFRα、Sca-1)を用いて純化したマウス由来骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)と歯髄幹細胞(DPSC)との間で異なっているかをReal Time RT-PCRにより解析した。今回調べたNotch受容体と関連する分子の大半はDPSCで高い発現が見られたが、Jag2とDll1の発現についてはBM-MSCで高い発現を示した。サイトカイン産生能については網羅的に解析し、DPSCとBM-MSC間で比較を行ったが、DPSCはBM-MSCよりも高いサイトカイン産生能を示した。そこで、DPSCとBM-MSCによる周囲の細胞に与える影響を、ヒト造血幹細胞との共培養系を用いて解析した。DPSCはin vitro条件で造血幹細胞の支持能を示したが、その支持能はγセクレターゼインヒビターによりNotchシグナルを抑制することで低下することが示された。このことはDPSCがNotchシグナルを介して隣接する細胞の未分化性を維持する可能性を示している。 また、DPSCは初代培養では良好な増殖能や分化能を有するが、経代培養が困難であったため、低酸素培養により経代培養時の問題が改善できるかを検討した。DPSCの初代培養細胞では、増殖後の細胞の脂肪、骨分化能は低酸素状態、通常酸素状態いずれの場合においても同程度であった。ところが、DPSCは、通常条件(37℃, 20%O2)の培養条件下で経代培養すると増殖能や分化能は急速に失われてしまった。一方、低酸素条件(37℃, 2%O2)下において、DPSCは経代培養によっても増殖能と骨や脂肪への分化能を失うことなく維持されており、低酸素培養がin vitro培養系においてDPSCの未分化性、増殖性維持に適していることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究計画に従い、Notch受容体を介する機構の解析、サイトカインの網羅的発現解析、低酸素培養に対する応答の解析を実施した。その結果、Notch受容体を介する機構の解析においては当初の計画を上回る成果を得た。さらに、低酸素培養において歯髄幹細胞の良好な増殖能や分化能が維持される結果を得た。一方、細胞増殖能の解析、遺伝子レベルでの網羅的発現解析などについては一定の成果を得たものの当初予定に比して十分な成果を得ることができなかった。これらの理由をふまえ、当初計画はおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究は概ね順調に遂行できたが、細胞増殖能の解析、遺伝子レベルでの網羅的発現解析について予備的な検討に留まり、結果的に研究費の使用実績として当初解析に必要な予定額を下回る結果となった。上述の解析は本研究遂行には必要なものであるため、次年度にさらなる検討を行うため研究費を次年度にわたって繰り越し使用する必要が生じた。今後の研究の推進に当たり大きく変更する点は無いが、当該年度より持ち越した解析を進め、さらに当初の実験計画に沿って切歯形成端における歯髄幹細胞とその外的環境のin vivo解析、歯髄幹細胞の移植実験を引き続き行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に得られた結果を基に、Notch受容体によるシグナルが周囲の細胞の増殖能に与える影響と低酸素培養下での歯髄幹細胞の経代回数と増殖能を解析するため各培養条件下で培養した細胞を経時的にMTTアッセイにより解析して増殖能を調べる。また、これらの細胞における細胞周期を解析するためBrdUを用いたFCM解析による細胞周期解析を行い、各培養条件下での細胞増殖能の違いを調べる。また、歯髄幹細胞とその外的環境のin vivo解析では、切歯形成端でのNotch受容体と関連分子、PDGF、FGFとそれらの受容体の発現を調べるため、免疫組織化学を中心とした発現解析を行う。また、組織内の低酸素状態を可視化するため、低酸素性の細胞に結合する性質を持つPimonidazoleをin vivo投与し、下顎組織の酸素状態を結合した化合物に対する抗体を用いた免疫染色で解析する。
|