研究課題/領域番号 |
23792304
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
中塚 隆介 関西医科大学, 医学部, 助教 (90454561)
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キーワード | 歯髄幹細胞 / 細胞外環境 / 造血制御 |
研究概要 |
前年度の研究より、低酸素培養がin vitro培養系において歯髄幹細胞(DPSC)の未分化性、増殖性維持に適していることが示唆されたが、各培養条件下でのサイトカイン産生能を比較した。DPSCは低酸素状態においてbFGF、VEGFやPDGF-BBなどの発現が上昇する傾向にあったが、有意に上昇するとは言えなかった。また、DPSCが周囲の細胞に対して与える影響を調べるため、ヒト造血幹細胞をin vitroで支持出来るかを前年度の研究から引き続き検討した。DPSCと骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)を用い、ヒト造血幹細胞をin vitroで培養後、免疫不全マウスに移植し、長期生着するヒト血球細胞を調べた。その結果、DPSCとBM-MSCで共培養下ヒト造血幹細胞はどちらの場合においてもヒト血球細胞の再構築能を示した。歯髄は非造血組織でありながら造血幹細胞支持能を有する細胞が歯髄中に存在することから、歯髄中での造血を妨げる何らかの要因がDPSCそのものに起因するのではなく、DPSCを取り巻く環境によるものである可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の研究は、前年度から持ち越された移植実験などの解析を行い、歯髄幹細胞を取り巻く環境が歯髄を非造血組織として成立させている可能性を見出すなど、一定の成果を得た。一方、当初予定していた切歯形成端における歯髄幹細胞とその外的環境のin vivo解析については、大学移転事業などのため、十分な研究期間が設けられなかったことから予備的な検討に留まり、結果的に当初予定に比して十分な成果を得ることができなかった。これらの理由をふまえ、当初計画はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究は大学移転事業など、研究を一時停止せざるを得ない状況に見舞われたこともあり、結果的に研究費の使用実績として当初解析に必要な予定額を下回る結果となった。一方で、当該年度行った移植実験により、歯髄幹細胞を取り巻く環境が歯髄幹細胞自身にも大きく関与していることが示された。この知見をさらに発展させることは本研究遂行には必要なものであるため、次年度にさらなる検討を行うため研究費を次年度にわたって繰り越し使用する必要が生じた。今後の研究の推進に当たっては、当該年度より持ち越した解析を進め、さらに当初の実験計画に沿って切歯形成端における歯髄幹細胞とその外的環境、周囲の細胞との関わりについてのin vivo解析を引き続き行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度より持ち越した解析として、組織内の低酸素状態を可視化するため、低酸素性の細胞に結合する性質を持つPimonidazoleをin vivo投与し、下顎組織の酸素状態を結合した化合物に対する抗体を用いた免疫染色で解析する。移植実験については一定の成果を得ることができているが、硬組織再生については十分な結果が得られていないので、引き続き行う。また、当該年度に得られた結果を基に、歯髄幹細胞とその外的環境のin vivo解析を行う。切歯形成端での歯髄幹細胞の挙動を調べるため、Nestin、Notch受容体と関連分子、増殖に関わるサイトカイン受容体の発現を調べるため、免疫組織化学を中心とした発現解析を行う。また、間葉系由来の歯髄幹細胞と、上皮由来のアメロブラストあるいはその前駆細胞との関係について、細胞表面抗原の解析等を行う。
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