研究概要 |
口腔カンジダ症などの粘膜表面からの感染に対しては第一ステップとして自然免疫が主体に反応すると考えられており、本研究ではヒトの加齢変化に伴う自然免疫の減弱レベルを評価し、口腔カンジダ症の新たな発症因子を探ることが目的である。 23年度は、ヒト末梢血単核球(PBMC)におけるToll-like receptor(TLR)の発現と機能、さらにNatural killer(NK)活性と口腔カンジダ症との関連性について調査した。口腔内の疼痛を主訴に北海道大学歯科診療センターを受診した25歳~89歳までの口腔疾患患者、北海道大学学生ならびに教員の健常人ボランティアを対象とした。各人にクロモアガー寒天培地にて口腔カンジダの検出を実施し、コロニー数に応じてカンジダ群39名、非カンジダ群49名に分類した。各人の末梢血よりPBMCを採取し、(1)TLR2ならびに補助レセプターであるTLR1,6、さらにTLR4の発現をフローサイトメーター(FCM)で測定、解析した。TLR1,2,4,6の発現レベルは口腔カンジダ症患者と健常者間で有意差は認めなかった。(2)TLR2,4のリガンドであるFSL-1,LPSを用いてPBMCを刺激し、NF-κBの転写活性を亢進させて、産生されたTNF-αやIL-6などのサイトカイン量をELISA法で測定しTLRの機能を評価した。結果TNF-αの産生量が有意に低下したことから、TLR2,4の機能の低下があるものと思われた。(3)PBMCのNK活性を計測し検討を行ったが口腔カンジダ症患者と健常者間で有意な差は認められなかった。以上より、口腔カンジダ症患者のPBMCではTLR2ならびにTLR4の下流のシグナル伝達分子の機能に異常がみられる可能性が示唆され、口腔カンジダ症患者ではTLR2ならびにTLR4の発現量は変化がなく、機能低下が重要な役割を果たしていることが推測された。
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