平成24年度科学研究費の助成を受け、化学療法誘発口腔粘膜炎の革新的治療法の開発へ向けたRIG-Iの機能解析の研究を行った。 平成23年度に歯肉線維芽細胞における抗悪性腫瘍剤と細菌・ウイルス感染によるRIG-I発現について検討を行った。タキソテールまたはシスプラチンを添加した後、LPS(細菌感染を想定)、polyIC(ウイルス感染を想定)を添加、一定時間培養の後、RIG-I並びに各種サイトカインのmRNA発現・タンパク産生を検討したところ、RIG-Iの発現上昇ならびにCOX-2、一部の炎症性サイトカインの発現も軽度上昇していた。 その結果を受け、平成24年度の研究を行った。タキソテール添加群とシスプラチン添加群を比較したところ、LPS、polyIC共にRIG-ImRNA発現上昇はタキソテール添加群で認め、タキソテール添加群で平成24年度の検討を行った。 平成23年度のデータを基に最適条件を設定し、歯肉線維芽細胞にタキソテール添加後、LPSまたはpolyICを添加、一定時間培養の後total RNAを回収し、DNAマイクロアレイで網羅的に遺伝子解析を行った。その結果、自然免疫に関与する1型インターフェロンを中心とした遺伝子のmRNA発現上昇が認められた。RIG-I遺伝子導入群においても同様の傾向を示したことから、タキソテール添加後のLPSまたはpolyIC添加刺激による1型インターフェロンのmRNA発現にRIG-Iの関与が示唆された。 また、一部の炎症性サイトカインも同様に発現上昇していることから、歯肉線維芽細胞においてRIG-Iを介した自然免疫応答能が化学療法誘発口腔粘膜炎の機序に一部役割を担っていることが示唆された。
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