RIG-I(retinoic acid-inducible gene-I)はその機能はいまだ明らかにされていない新規の遺伝子である。申請者は本研究で新たな癌抑制遺伝子の可能性を有した同遺伝子を用いて口腔内の免疫機構を賦活化させ、さらに癌細胞の細胞周期を制御することによる、遺伝子治療としての新たな癌治療法の可能性に着目し、検討を進めることとした。 本年度は前年度までに施行したRNAウイルスセンサーであるRIG-Iでの検討に加え、細胞質DNAウイルスセンサーとして近年注目されているDAI(DLM-1/ZBP1)についての検討も併せて行った。HSC-3細胞株を用いてIFN(α2-b、γ)で刺激およびsiRNA(DAI) transfectionを行い、RT-PCRおよびWestern Blottingでの検討を行ったところ、DAI遺伝子の発現に変動は見られるもののDAIの蛋白産生について明らかな変動は見られなかった。 既存の抗がん剤とRIG-I遺伝子導入での比較検討では、細胞へのウイルス感染や癌化への生体防御機構の一つとしてアポトーシスを引き起こすカスパーゼカスケードに着目して検討を行った。アポトーシス実行型のcaspase-3について蛍光染色を行ったところ、タキソテールで活性化したcaspase-3はRIG-IのsiRNAで著明に抑制することから、RIG-Iはタキソテールで引き起こされるアポトーシスの過程でcaspaseの活性化に重要な役割を担っていることが示唆された。
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