研究課題
顎関節症患者の疼痛は、関節円板の転位による周囲組織への侵害刺激であると考えられているが、顎関節滑膜に組織学的変化が起こり、疼痛関連因子が発現されているとされる仮説も存在する。本研究は、顎関節症患者の滑膜組織の変化を経時的に検索し、顎関節症患者の疼痛に滑膜組織がどのように関与しているかを明らかにすることを目的とした。まず正常顎関節滑膜組織がいかなるものかを明確にすべく、発生学見地から観察を行った。生後1目では、上関節腔表層に扁平なHsp25陽性の滑膜B型細胞の出現がみられ、生後3日目では、滑膜表層に配列する細胞に加え、やや深部に存在し細胞質突起を関節腔に向けて伸ばすHsp陽性B型細胞胞も確認された。生後7日目ではHsp陽性B型細胞はその数を増して細胞内小器官を充実させ、滑膜表層はB型細胞の細胞体や細胞質突起によって覆われるようになった。生後15日目では滑膜表層のHsp陽性B型細胞が重層化し、滑膜ヒダ側面を扁平な陽性細胞がシート状に覆うようになった。生後30日目では生後15日目および生後50日目と大きな組織学的変化は観察されず、これらの日齢あたりの滑膜組織がいわゆる正常の滑膜組織の像であることが確認された。その後、本週齢のラットにおいて、強制過大開口を与えた異常顎関節モデルについて観察を行ったが、予想に反し、異常顎関節モデルの滑膜組織と正常顎関節滑膜組織に、組織学的な違いは見いだされなかった。機械的刺激である過大開口のみでは、滑膜組織に変化が生じず、正常と異常の直接的比較は不可能であったが、顎関節滑膜組織の発生と正常構造は明らとなったため、今後は異常顎関節モデルの作成に改良を加え、引き続き検討を続けていく予定である。
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BMC Cancer
巻: 13 ページ: 410
日口科誌
巻: 62 ページ: 215-223