研究課題/領域番号 |
23792328
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
飯田 一規 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (30585237)
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キーワード | 再生医療 / 歯髄細胞 / iPS細胞 / 低酸素 |
研究概要 |
我々は、これまで若年者のヒト智歯から歯髄細胞(Dental Pulp Cell : DPC)を樹立し、DPCが高い増殖・分化能(ステムネス性:幹細胞性)を有し、人工多能性幹細胞(iPS細胞)へ高率に誘導できることを明らかにした。また、高齢者からのDPCは、若年者に比べてはるかに樹立効率が低くステムネス性の維持も困難であったが、低酸素下での培養によりこれらの問題を解決するに至っている。しかし、高齢者から得られたDPCのiPS細胞への誘導効率は極めて低く、再生医療に応用するためには、今後、原因の解明と改善が必要な状況となっている。本研究では、若年者のヒト線維芽細胞からiPS細胞への誘導に特定期間の低酸素培養が有効であったとの報告に注目し、高齢者から得られたDPCで、どの程度の効果が得られるのかを検証すると伴に iPS細胞化に最適な誘導条件について検討を行い、誘導効率の向上を目指した。 一昨年度まででは、DPCからiPS細胞への誘導効率を上昇させる酸素培養条件について検討を行い、従来よりも約4~7倍のコロニー数を得られる条件を見出した。これは、若年者だけではなく、高齢者にも同様の効果をもたらした。この条件によって得られたiPS細胞は、免疫染色、realtime PCR法、テラトーマ形成、EB形成を行い、従来のiPS細胞と同等の未分化性、多分化能をもつことがわかった。昨年度では、通常酸素条件と低酸素条件での、iPS誘導における遺伝子変化を探索し、上皮系細胞遺伝子やサイトカイン関連遺伝子の発現量に違いが生じていることが分かった。特にCDH1(E-cadherin)の変化は大きく、これがkey遺伝子の一つではないかと考えられた。今年度は、key遺伝子の更なる探索と、低酸素で作成したiPS細胞の安全性について解析を行う。これらの研究はiPS誘導、低酸素研究に新たな提言を与えられる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
歯髄細胞からのiPS細胞への誘導において、有効な低酸素条件と、そのkey遺伝子となる遺伝子を見出すことができた。さらに、これまでの研究内容を海外科学誌に投稿し、受理、掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
iPS細胞への誘導効率を向上させたメカニズムについて更なる探索を行う。また、低酸素条件で誘導したiPS細胞の安全性について解析を行う。
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