研究課題/領域番号 |
23792338
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
辻 忠孝 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (50527231)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 嗅覚情報 / 甘味嗜好性 / 血糖値 |
研究概要 |
味覚と嗅覚情報は,食の嗜好性を形成する上で重要な役割を果たしていると考えられている.経管栄養患者では,食の感覚情報が乏しく,食に対する拒絶感を抱きやすい傾向にあるが,味覚や嗅覚情報が,栄養吸収に如何なる影響を及ぼしているか詳細は不明である.今回,雄性成獣ラットを用いて,嗅覚遮断を行う前後で経口糖負荷を行い,血中糖動態を比較検討した.また,野生型・嗅覚遮断ラットを用いて,経口投与条件・口腔内からの味覚情報を遮断した経管投与条件下で同様の糖負荷試験を行い,水とブドウ糖溶液による二瓶選択実験を実施した.嗅覚遮断によって糖負荷後の最大血糖値は有意に低下した.野生型・嗅覚遮断ラットともに経管投与条件下では,血糖曲線は緩やかに上昇し,最大値は低下した.嗅覚遮断ラットでは,全溶液摂取量及び全溶液摂取量中の糖液摂取量の比率は減少した.味覚及び嗅覚情報の遮断が,糖液摂取後の血中糖動態・甘味嗜好性を変化させることが明らかとなり,経口摂取に伴う味覚・嗅覚情報が血中糖動態に重要な役割を果たすことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
味覚・嗅覚情報が味の嗜好性さらには血中糖動態への影響について、科学的に解明するために、動物実験から始まり、最終的にはヒトを対象とし、解析・検討を行っていく。現在まで、申請書で予定していた通り、ラットを対象とし、1.味覚情報なし条件下による糖負荷後の血中糖動態への影響について検討を行った。また、2.味覚情報と味の嗜好性の関連性を明らかとした上で、3.嗅覚情報なし条件下での味の嗜好性の関連性について調べ、4.味覚・嗅覚情報ともになし条件下での血中糖動態への影響について検討を加えた。得られた結果より、味覚・嗅覚の感覚機能と味の嗜好性・糖動態の関連性を解明し、よりおいしく感じ食べることの重要性を明らかとし、嗜好性・糖動態の調節の方策を考案していく。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題を遂行するにあたり、摂食行動・味覚の分野に詳しい大阪大学名誉教授である山本 隆先生(現在は畿央大学教授)に、これまで協力を仰ぎアドバイスを得てきた。現在、摂食促進ペプチドであるオレキシンの研究でも共同研究しており、定期的に研究打ち合わせを行っているので、連絡調整等に問題はない。平成24年度にはデータ解析用のソフトを申請している。消耗品については、必要な実験動物、試薬、器具、外注検査に関わる費用をそれぞれ計上している他、研究成果公表にあたって必要な旅費、印刷費を別に申請している。
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次年度の研究費の使用計画 |
グレープフルーツ・桂花匂い条件下での味の嗜好性の関連性について 雄性成獣Wistar系ラット(6-7週齢・体重200-250 g)を使用する。現在までに、糖負荷後の血中糖動態への影響について検討し、自律神経系を介した結果を得てきたグレープフルーツ(交感神経系を賦活化)、桂花(副交感神経系を賦活化)の匂い刺激を長期的に付与した際の、味の嗜好性への影響について検討する。実験2と同様に、味の嗜好性を確認するために、糖液の濃度を変えて二瓶法にて評価する。餌は自由摂取(ペレット食)とする。ヒトでの味覚情報ブロックによる糖負荷後の血中糖動態への影響について ラットを対象とした実験で得られた結果が、ヒトでも同様な結果が得られるのか検討する。基礎疾患を有さない健常人を対象とし、実験前日より絶食状態とする。両群ともに実験前日22時より絶食状態とする。実験当日は、糖動態の日内リズムへの影響を考慮し、午前9時より開始とする。キシロカインゼリーを鼻腔へ投与し、表面麻酔施行後、フィーディングチューブ(8Fr)を片側鼻腔より胃まで挿入し、留置する。手腕に22Gの留置針を留置し、採血可能となるように準備しておく。食前血糖値を測定した後、トレーランG75(グルコース75 g)を6分間で、1.経口投与群、2.経管投与群にて行う。糖液投与後、チューブは除去し、15・30・45・60・90・120分時に同様の手法にて採血し,血糖値・血清インスリン値を測定する。(血糖測定はテルモGR-102を使用、血清インスリン測定は外部業者:ファルコバイオシステムへ依頼)
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