8回膜貫通分子TMEM16E/GDD1遺伝子上の異なった変異が常染色体優性遺伝する顎骨骨幹異形成症(GDD)および常染色体劣性遺伝する肢帯型筋ジストロフィー(LGMD2L)の原因であることを見いだし,以降TMEM16E/GDD1遺伝子産物の機能解析研究を行ってきた.TMEM16E遺伝子産物の生化学的機能やその発症メカニズムは,まだ全く不明で,その機能を明らかにすることは,様々な骨疾患や筋疾患の病態の理解や治療に寄与する可能性がある.本研究において,TMEM16Eノックアウトマウスを作製しTMEM16Eの生理的機能解析を行ったが,見た目上,明らかな表現型は認められなかった.しかしながら,成体TMEM16Eノックアウトマウスの全身臓器を病理組織学的に評価した結果,心室拡張および心室壁菲薄化と大腿骨骨端部の萎縮を認めた.また,TMEM16は遺伝子ファミリー(TMEM16A~K)を形成しているが,TMEM16ファミリー遺伝子産物の機能はこれまで不明であった.2008年にTMEM16Aがカルシウム依存性Cl-チャンネルとして機能する(Schroeder BC et al. ,Cell,2008)ことが, また2009年にはTMEM16Bも同様の機能をする(Stöhr H et al. ,J Neurosci.,2009)ことが相次いで報告された. TMEM16Eノックアウトマウスで明らかな表現型が認められなかったことからも,TMEM16ファミリー遺伝子の代償機能が予想された.in vitroのTMEM16E導入安定株の系で,TMEM16E遺伝子産物はカルシウム添加の有無にかかわらずクロライドチャンネル活性を認めず,他のTMEM16ファミリー遺伝子とは異なった独自の機能を持つことを証明した.
|