研究課題/領域番号 |
23792348
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
土井 充 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (30412620)
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キーワード | 慢性疼痛 / 舌痛症 / 脳機能画像 / 破局的思考 / 認知行動療法 |
研究概要 |
舌痛症は、口腔顔面痛外来を受診する患者において最も多い疾患の一つである。その病態については、微細な神経障害性疼痛や心理社会的要因によるものなど諸説あるが明確ではなく、治療法も一様ではない。また長期慢性化し難治性となるもの、日常生活に多大なる支障をきたす場合も多く、その病態理解と、治療法確立は急務であると考えられる。 今回、我々は舌痛症患者の認知行動モデルとして考えられる、破局的思考(痛みの反芻、無力感、拡大視)、がん恐怖などに注目し、質問紙によりこれらの評価を行ったところ、健康対照群に比べ、破局的思考やがん恐怖、不安、怒りなどが有意に強いことが証明された。 さらに、これらの認知特性に則した情動賦活試験を作成し、f-MRIでの評価を行う予定である。具体的な情動賦活試験としては、口腔内への痛み刺激と、視覚的情動刺激(快・不快刺激)を同時に与える試験や、気ぞらしを教示した状態で口腔内と他部位にさまざまな痛み刺激を与えた際の注意機能の試験を作成した。この情動賦活による行動実験では、健康対照群に比べて、舌痛症患者群では、痛みは情動による影響を受けやすく、他部位に比べて口腔内には注意が向きやすい傾向があることが分かってきた。今後は、情動賦活試験を行いながらのf-MRI撮像を行い、脳機能画像での評価を行っていく。 また、作用機序の違う2つの投薬治療(神経障害性疼痛に対するプレガバリンと心理的要因に対するデュロキセチン)による効果からの病態評価、認知行動療法の治療効果の評価も並行してデータを集積している。今後はこの治療前後の脳機能画像評価も含め検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
舌痛症の病態理解という点で、舌痛症群で質問紙による心理的評価が、健康対照群と比較して行え、特異的な変化が認められたので、進展していると考えられるが、この認知行動モデルに則した、情動賦活試験作成に試作を繰り返したため時間を要し、現時点ではやや進行は遅れている。現在の情動賦活試験での脳機能画像評価がうまくいけば、今後の進展は円滑に行えると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
舌痛症の認知行動モデルに則した情動賦活試験下での脳機能画像評価を行っていく。 また並行して、作用機序の違う2つの投薬治療(神経障害性疼痛に対するプレガバリンと心理的要因に対するデュロキセチン)による効果からの病態評価、認知行動療法の治療効果の評価のデータも継続して行う。今後はこの治療前後の脳機能画像評価も含め検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の殆んどをf-MRI撮像のための費用として予定している。情動賦活試験の作成や認知行動モデルの評価のために時間がかかり、研究自体がやや遅延し撮像まで至っていないので24年度までの研究費は約150万円持ち越している。本年度の予算と合わせて、脳機能画像評価のためのf-MRI撮像費用、情動賦活試験のプレゼンテーションキー購入費、治療薬として使用するサインバルタの購入費、保険加入費にすべてを使用する予定である。
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