口腔癌細胞を用いた、CDDP単独、温熱療法単独、熱ショック転写因子をknockdownによる抗腫瘍効果をin vitroにて効果判定した。結果は、それぞれ単独群では投与量、温度、ウィルス量に依存して細胞増殖能の低下、アポトーシス誘導の増加、細胞浸潤能の低下、細胞遊走能の低下などを認めた。次に、それぞれのコンビネーションを行ったところ、CDDP+HS、HS+KDでは相加効果を認めるも、CDDP+KDでは有意に効果の増強を認めなかった。しかしながら、CDDP+HS+KDの3者併用群では有意に相乗効果を認めた。 また、3種類の癌細胞株においてHSF1をknockdownすることで遺伝子発現量の低下を来す共通する8つの遺伝子をmicroarrayにて同定できたので、HSF1との関係、癌細胞における役割を検証した。結果は、8種類の遺伝子のうち2種類の遺伝子においてHSF1と同様の発現様式を呈するものを認め、実際の口腔扁平上皮癌および白板症の生検材料より免疫組織学的検討を行ったところ、有意に癌細胞においてその発現が上昇していることからHSF1の癌細胞に対する様々な影響の一因となることが解明された。 当初の目的では、HSF1と他のHSF群とのコンビネーションによるノックダウンを検討していたが、先に述べたように、他のHSF群のノックダウンが困難となり、代わりに新たなるHSF1関連遺伝子のノックダウンを行った。結果は、HSF1ほどの細胞増殖抑制効果はないものの、コンビネーションによるノックダウンでは、双方の細胞増殖抑制効果が増強されかなりの癌細胞治療への期待が高くなった。 以上のことを、論文掲載予定である。
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