申請者らは、高分化型口腔扁平上皮癌(OSCC)細胞がCK17を高頻度に発現し、低分化型OSCC細胞がCK20を高頻度に発現する可能性、また臨床的には原発巣と末梢血中では癌細胞に発現するCKに差がある可能性を見い出した。そこで本研究では、CKがOSCCの新規予後因子として有用であるかを解明することを目的として、OSCC患者から末梢血を経時的(術前、術中、術直後、経過観察時)に採取し、末梢血中のCK陽性癌細胞とその分化度との関連を検索した。OSCC患者20名から、術前に末梢血を採取しCKの発現頻度を検討したところ、CK17は20/20例(100%)、CK19は15/20例(75%)、CK20は12/20例(60%)であった。またそれぞれのCKの発現頻度を経時的に検索すると、CK17は術前、術前治療終了時、経過観察時(術後1か月)における相対比は1:0.73:0.87、CK19は1:1.14:1.36、CK20は1:1.17:1.80であった。さらに予後良好症例および予後不良症例において、CK17の相対比は、術前は両群間で同じであったが、術後に予後良好症例では相対比が0.69に減少しているのに対して、予後不良症例では1.38に増加していた。CK19の発現は術後、予後良好症例では相対比が1.02とほぼ変化なく、予後不良症例では1.82に増加していた。CK20の発現は術後、予後良好症例では相対比が5.48に増加しており、予後不良症例では0.09に減少していた。以上より、術後1ヶ月の末梢血中のCK17は、初診時と比較すると予後良好症例では減少していたが、予後不良症例では増加していたことから、CK17が予後因子である可能性が示唆された。また経時的観察の結果より、末梢血中の CK17は、術前放射線化学療法により減少し、術前と比較すると術後の CK17 発現量も減少することが分かった。
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