研究課題/領域番号 |
23792358
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川野 真太郎 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00398067)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 / delta p63 / 上皮-間葉転換 / 浸潤 / 転移 |
研究概要 |
近年、癌抑制遺伝子p53のホモログであるΔNp63が、器官発生に必須である上皮-間葉転換(epithelial-to-mesenchymal transition: EMT)に関与していることが報告されている。EMTが誘導された細胞は線維芽細胞様の形態変化、上皮系マーカーの発現量減少、間葉系マーカーの発現量増加、遊走能の亢進、増殖能の低下、細胞間接着の低下などの表現型を示すが、このような細胞特性が癌の浸潤・転移に寄与していることが最近の研究により示唆されている。しかしながら、その分子機構については明らかではない。本研究では、口腔扁平上皮癌(oral squamous cell carcinoma: OSCC)の浸潤・転移の分子機構を解明するために、浸潤・転移におけるΔNp63を介したEMTの関与について検討を行った。 5種類のOSCC細胞株およびヒト胎児由来腎細胞(HEK293)を用いてΔNp63、E-cadherin、cytokeratin (CK) 5、およびCK 14、vimentinおよびN-cadherinの発現をRT-PCR法、Western blotting法、および免疫細胞化学的染色法を用いて検討した。その結果、ほとんどの細胞株においてΔNp63の発現を認めたが、高転移株であるSQUU-BではΔNp63の発現を認めず、vimentinの発現を認めた。次に、OSCC細胞の増殖、分化、および遊走におけるΔNp63の機能について検討した。まず、ΔNp63を高発現していたHSC-2にsiRNAを遺伝子導入しΔNp63をノックダウンしたところ、多角形であったHSC-2の細胞形態が紡錘形へと変化し、細胞増殖活性の低下、細胞遊走能の亢進が認められた。さらに、CK 5およびCK 14の発現量は減少し、vimentinおよびN-cadherinの発現量は増加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、大学院生3名とともに研究を遂行している。各自、役割を分担しながら研究をおこなっており、その研究成果の一部は国際雑誌に掲載されている。現在は来年度の実験計画であるdelta Np63を過剰発現させた口腔扁平上皮癌細胞株の樹立をすでに行っており、現在クローニング中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、来年度の実験計画であるdelta Np63を過剰発現させた口腔扁平上皮癌細胞株の樹立に取り組んでおり、現在クローニング中である。この細胞株の樹立が成功すれば、OSCC細胞の増殖、分化、および遊走におけるΔNp63の機能についてさらに裏付けとな検討が可能となる。この細胞株の細胞形態の変化、細胞増殖活性、細胞遊走能、上皮系ならびに間葉系分子マーカーの発現の検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用用途については、昨年度と大きな変更はない。次年度は、口腔扁平上皮癌患者の生検材料を用いて、delta Np63、サイトケラチン、E-cadherin、ビメンチン、N-cadherinの発現を調べる予定であるため、抗体などを多く購入する必要があると思われる。また、研究成果の一部は国際学会や国内学会で発表を行う予定である。
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