研究課題/領域番号 |
23792358
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川野 真太郎 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00398067)
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キーワード | 上皮-間葉転換 / 口腔扁平上皮癌 / ⊿Np63 / 転移 / 浸潤 |
研究概要 |
近年,個体発生の様々な局面で必須の現象の1つである上皮-間葉転換(epithelial to mesenchymal transition: EMT)が癌の発生,浸潤,転移に深く関与している可能性が示唆されている.これまでに申請者はp53ファミリーの1つである⊿Np63に着目し,口腔扁平上皮癌において⊿Np63の発現の消失によりEMTが誘導される可能性を見いだしてきた.本研究は,口腔扁平上皮癌における⊿Np63を介したEMTの分子機構を解明することを目的とし,新しい診断方法や治療薬を開発するための基盤となる研究を行うことを目的とした。 昨年度までの研究により、高転移株であるSQUU-B細胞において⊿Np63の発現が消失しており、EMT細胞の多くの細胞形質を有していることが分かった。そこで本年度は、SQUU-B細胞に⊿Np63を遺伝子導入することにより、その細胞形質がどのように変化するかについて検索を行った。上皮系マーカーとして、E-cadherin、CK5、14、19を、間葉系マーカーとしてvimentin、N-cadherin、fibronectinを用い、RT-PCR法、real-time PCR法ならびにWestern blotting法によりその発現を検索した。また、細胞増殖活性の評価にはBrdU incorporation assayを用い、細胞遊走能はwound healing assayにて評価した。その結果、⊿Np63の遺伝子導入により細胞形態が紡錘形から多角形へと変化し、上皮系マーカーの発現量上昇、間葉系マーカーの発現量減少、細胞遊走能の低下、細胞増殖活性の亢進を認めた。これらの結果は、⊿Np63が上皮細胞の形質発現に重要であることを示すとともに、その発現消失がEMTに深く関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、大学院生4名とともに研究を遂行している。各自、役割を分担しながら研究をおこなっており、その研究成果の一部は国際雑誌に掲載されている。現在は、高転移株SQUU-B細胞からEMT細胞を分離する方法を確立することにより、癌の浸潤・転移におけるEMTの役割について更に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
高転移株SQUU-B細胞は多くのEMT細胞の形質を有しているが、EMT細胞の代表的特徴であるE-cadherinの発現低下は認められなかった。しかしながら、細胞免疫染色法によりSQUU-B細胞の中にE-cadherinの発現が減弱した細胞が認められた。これらの細胞は完全なEMT細胞であると考えられるため、現在これらの細胞の分離・同定を進めると同時にその細胞特性について研究を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養、免疫組織化学的染色、PCRなどの分子生物学的実験に必要な薬品等に使用する予定である。
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