研究課題
近年、上皮-間葉転換(EMT)が癌の浸潤・転移に深く関与していることが示唆されている。これまでに申請者は、口腔扁平上皮癌(OSCC)における⊿Np63の発現の消失がEMTを誘導する可能性を見い出してきた。今回われわれは、OSCCにおける⊿Np63を介したEMTの分子機構をさらに解明し,癌の浸潤,転移のメカニズムを理解することを目的として研究を行った.5種類のOSCC細胞株を用いてΔNp63、上皮系ならびに間葉系マーカーの発現を検索した。その結果、高転移株であるSQUU-BにおいてのみΔNp63の発現を認めず、vimentinの発現を認めた。ΔNp63を高発現していたHSC-2細胞にΔNp63siRNAを遺伝子導入したところ、細胞形態が紡錘形へと変化し、細胞増殖活性の低下、浸潤・遊走能の亢進が認められた。また、上皮系マーカーの発現量減少、間葉系マーカーの発現量増加を認めた。次に、ΔNp63過剰発現細胞株(SQUU-BO)を樹立し、同様に機能解析を行ったところ、SQUU-BOは細胞形態が多角形へと変化し、細胞増殖活性の亢進、細胞遊走能の低下、上皮系マーカーの発現量増加、間葉系マーカーの発現量減少を認めた。さらに、OSCC細胞株に5-FUおよびCDDPを添加したことろ、SQUU-Bのみがこれらに耐性を示した。また、SQUU-Bのみがスフェア形成能を有していた。次に、OSCC生検材料におけるΔNp63の発現を免疫組織化学的に検索したところ、浸潤先端部でのΔNp63発現減弱を有する群においてリンパ節転移や遠隔転移の発生頻度が有意に高かった。本研究により、OSCC細胞においてΔNp63の発現減弱がEMTを誘導し、間葉系細胞様の形質発現に関与していることが示された。また、EMTが誘導された細胞は幹細胞様の性質を有しており、抗癌剤に対する治療抵抗性に関与しているものと推察された。
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Clinical & Experimental Metastasis
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