研究課題
当該年度の目的は,EpCAMをマーカーとして分離した細胞分画が癌幹細胞様性質を示すかどうかを検証することであった。したがって,EpCAM陽性癌細胞の分離を行った。具体的には舌癌細胞株OSC19およびSASを用いて,EpCAM陽性細胞をポジティブセレクション法で分離した。これにより,癌幹細胞の性質をもつ細胞を分離できたと考えられる。さらに癌幹細胞様細胞であるかの検討を行う必要性があったため,分離した細胞分画について,FACSを用いてSP解析を行った。当然side population細胞は増加し,分離した細胞は癌幹細胞の性質を持っていることが強く示唆された。また癌幹細胞マーカーとされているABCG2,Oct-4,NanogおよびNestinについてRT-PCRでmRNAの発現を検討し,分離前の細胞集団と比較し,有意に癌幹細胞マーカーは増加していた。これは,EpCAMが癌幹細胞マーカーとして有用であること強く示唆する結果であるが,その細胞生物学的特性が臨床における癌組織において,どれほど臨床病理学的特性を反映しているのかは不明である。そこで,臨床材料を用いた検討を行った。舌扁平上皮癌症例58例について,抗EpCAM抗体を用いた免疫組織化学的染色を行い,臨床病理学的因子との相関性を検討した。局所再発例においては,病理組織学的に最深部浸潤先端から1mm以上離れて小さな腫瘍細胞塊を認める特徴的な浸潤様式がみられた。これらの細胞塊について癌幹細胞マーカーEpCAMを用いた免疫組織化学的検討を行った結果,陽性となる傾向が認められた。以上の結果から,舌癌再発の原因として,癌幹細胞と思われる治療抵抗性細胞の関与が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
おおむね予定通りであるが,追加的に臨床材料を用いた検討を行っているため,予定であるmicroRNAとの関係の検討に至らなかった。
早急にmicroRNAの関与についての検討に着手するようにする。
臨床材料を用いた検討については,現状通り,進めながら,microRNAの検討における試薬の購入および研究成果発表の準備について重点的に研究費を使用する。
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Oral Oncology
巻: 47 ページ: 855-860
DOI:10.1016/j.oraloncology.2011.06.501