研究概要 |
近年の再生医療技術の進歩は目覚ましく、中でもバイオリサイクルの観点から乳歯は歯髄幹細胞の有効な細胞供給元として注目されている。特に2003年にヒト乳歯歯髄幹細胞(SHED)の存在が報告されて以降、その性質がいくつか明らかにされたが、まだ不明な点が多く残る。アルカリフォスファターゼ(ALP)は幹細胞マーカーの一つとして広く用いられており、ALP活性の高い細胞は他の幹細胞特異的遺伝子も発現する可能性が考えられることから、乳歯歯髄細胞における遺伝子発現について検討した。交換期障害のために抜歯された健全乳歯のうち、本研究目的について患児および保護者から同意を得られた5名の乳歯から採取した。結果として、ALP活性が高い乳歯歯髄細胞では、他の幹細胞特異的遺伝子の発現も認め、歯髄細胞からiPS細胞を樹立する場合、複数の幹細胞特異的遺伝子を発現する乳歯歯髄細胞を選択することの重要性が示唆された。 iPS細胞の樹立にはfeeder細胞をしばしば用いるが、このfeeder細胞の特性によりiPS樹立、培養維持に影響があるかどうかの検討を行った。feeder細胞としては、MEF細胞とSTO細胞を用いた。ヒト由来のOCT3/4, SOX2, KLF4, L-MYCの4因子を乳歯歯髄細胞へ遺伝子導入し、feeder細胞上に播種し、iPS細胞を樹立した。MEF細胞上では、20継代以上培養維持が可能であった。しかしiPS細胞樹立後STO細胞では4~5継代まででクローンは消滅した。また、このiPS細胞を10継代維持した後にSTO細胞上に播種したところ、20継代まで培養維持が可能であった。今後、feeder細胞の与える影響について検討するとともに、他の組織との樹立効率についても検討を行う予定である。
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