研究課題/領域番号 |
23792365
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
曽我部 陽平 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (50468104)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / 癌 / 歯学 / 遺伝子 |
研究概要 |
口腔扁平上皮癌におけるDKK遺伝子のメチル化状態と発現状態との関連を解析する目的で、RT-PCR法によるDKK1、DKK2およびDKK3遺伝子の発現解析と、Methylation-specific PCR (MSP)法によるメチル化解析を行った。17種の口腔扁平上皮癌細胞株について解析を行った結果、すべての細胞株において、いずれかのDKK遺伝子の発現抑制が認められた。メチル化阻害薬5-Aza-dCで処理を行った細胞株で同様の解析を行ったところ、いずれも発現の抑制は見られなかった。MSP法によるメチル化解析の結果と対比させたところ、遺伝子のメチル化と発現抑制との間に関連が認められた。臨床例44症例においてDKK遺伝子のメチル化解析を行ったところ、半数の症例において、いずれかのDKK遺伝子のメチル化が認められた。Wntシグナル経路活性を解析する目的で、口腔扁平上皮癌細胞株での12種のWnt遺伝子の発現解析(RT-PCR)、ウェスタンブロット法でのbeta-cateninタンパクの発現解析を施行した。すべての細胞株において、複数のWnt遺伝子の発現を認めた。すべての細胞株でbeta-cateninタンパクの発現が認められた。以上の結果から、口腔扁平上皮癌においてはDKK遺伝子がDNAメチル化によって高頻度に不活化され、結果としてWntシグナル経路が活性化し、腫瘍の形成が促進されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究は口腔扁平上皮癌細胞株および口腔扁平上皮癌組織における各DKK遺伝子のエピジェネティックな異常の解析およびWnt経路活性化の解析、beta-cateninの局在解析、遺伝子強制発現によるDKK遺伝子の機能解析を行い、口腔扁平上皮癌におけるDKK遺伝子の癌抑制遺伝子としての役割を明らかにするものである。当該年度において口腔扁平上皮癌において各DKK遺伝子がエピジェネティックに不活化されていること、Wnt経路活性化解析のための各Wnt遺伝子の発現状態およびbeta-cateninタンパクの発現状態が明らかにされていることから、当初の研究の目的についてはおおむね順調に達成できているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は口腔扁平上皮癌細胞株および組織検体における各DKK遺伝子の発現解析およびメチル化解析、Wnt遺伝子の発現解析、beta-cateninタンパクの発現解析を行った。今後さらにコロニーフォーメーションアッセイによる各DKK遺伝子の機能解析やTCF/LEFレポーターアッセイによるWnt経路活性化の解析、蛍光免疫組織化学染色によるbeta-cateninタンパクの細胞内局在の解析を行い、DKK遺伝子不活化によるWntシグナル経路への影響を中心に解析を行う。ダイレクトシークエンス法によるCTNNB1遺伝子のexon3領域の変異解析を併せて行い、beta-cateninタンパクの細胞内蓄積や核移行が同領域の遺伝子変異の影響を受けているか否かの検証を行う。これらの結果を臨床病理学的所見とあわせて解析し、Wntシグナル経路における分子標的の同定と開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
DKKによる増殖抑制効果を検討するためにコロニーフォーメーションアッセイを、口腔扁平上皮癌細胞株におけるTCF/LEF転写活性を解析するためにルシフェラーゼアッセイを、CTNNB1遺伝子のexon3領域の変異解析を行うためにダイレクトシークエンス解析を、beta-caateninタンパクの細胞内局在を調べるために蛍光免疫組織化学染色を行う。コロニーフォーメーションアッセイにはDKK発現ベクター、G418等の試薬、TCF/LEFレポーターアッセイにはpGL3-OT、Lipofectamine 2000等の試薬、ダイレクトシークエンス法にはプライマーやTerminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社)等の試薬、蛍光免疫組織化学染色には5%正常ヤギ血清やガラスチャンバースライドなどの消耗品等が、細胞培養にはRPMI1640やFBS等の培地やシャーレ、ピペットチップ等の消耗品が必要となる。研究費はこれら薬品および消耗品の購入に120万円を、学会誌投稿料および印刷費として30万円を使用する予定である。
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