研究課題
チタンファイバーを不織布状にした多孔質体であるチタンファイバーウェブによる顎骨再建材料を作製するため、同材料の有効性を検討した。チタンファイバーウェブは骨芽細胞培養や小動物の骨欠損への埋入試験において、いずれも良好な骨組織親和性を認めたが、このチタンファイバーウェブをさらにハイドロキシアパタイト薄膜でその多孔質体構造に全く影響を与えずに内部まで均一にコーティングしたところ、骨芽細胞の活動性の上昇が認められ、非コーティング群では培養14日目で認められていた石灰化物形成が培養3日目ですでに観察され、アパタイト結晶の有意な形成促進が認められた。また、動物実験ではラット頭頂部に直径5mmの骨欠損とこの欠損に一致するチタンファイバーウェブを作製して埋入したが、両群とも埋入後4週ではチタンファイバーウェブ内の約50%程度に新生骨が認められたのに対し、コーティング群では埋入2週で約5倍の新生骨が認められ、非コーティングよりも著しく有意に早い新生骨形成が認められた。これらの結果より、チタンファイバーウェブはハイドロキシ薄膜コーティングによって、骨組織との親和性が著しく上昇させられると考えられた。また、この材料を元にブロック材料を作製し、ウサギ下顎骨再建モデルにて検討した。ウサギ下顎骨に10ミリの区域欠損を形成し、連続性が完全に失われた状態で、欠損部にチタンファイバー綿製ブロックを移植し、チタンプレートにて固定をした。チタンブロックは下顎骨を十分再建し、ハイドロキシアパタイト薄膜でコーティングした場合には、下顎の連続性を回復させる程の骨形成が、ブロック外に認められた。これより、下顎骨再建材料としても有効な材料となり得る事が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
チタンファイバー綿を使用した下顎骨再建材料の作製および動物実験に関しては順調に進展し、今後期待できる成果が得られたと考えられた。
動物実験にて長期間の生体内において安定していることが確認できたため、今後の臨床応用を念頭においた研究を検討していく。まずチタンファイバー製ブロックの力学的特性を解析し、これをコンピューター上で再現し、シミュレーションサージェリーと有限要素法解析により、本材料の力学的解析を進めていく。
チタンブロックを用いたヒト下顎骨再建モデルを作製し、これをスキャナーなどで取り込んで有限要素解析を実施するために研究費を使用していく。また、動物実験で得たデータの組織解析にも使用する。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery
巻: 26 ページ: 245-250