骨組織との親和性の高いチタン材料を直径50μmからなるファイバーによるスキャホールド状に成形し、顎骨組織の3次元的再生を試みた。スキャホールドの空隙率を60%、75%、87%とし、骨芽細胞の増殖および分化を調べたところ、細胞増殖には大きな差は認められないものの、87%の空隙率を有するスキャホールドにおいて有意な分化の亢進を認めた。これより空隙率87%のチタンファイバーブロックを作製し、ウサギ下顎骨に区域欠損を形成し、同欠損部位をチタンファイバーブロックにて再建した。チタンファイバーブロックはハイドロキシアパタイトにてコーティングを行った群と、未処理群とに分類した。ハイドロキシアパタイトコーティングは分子プレカーサー法にて実施し、カルシウム・リン比1.67の溶液に浸漬後、600℃にて2時間加熱処理にてコーティングした。 ウサギ下顎骨再建手術は全身麻酔下で実施し、10㎜の連続欠損を作製後、10x10x5㎜に成形したチタンファイバーブロックを移植し、チタン製プレートにて再建した。9週後、21週後に屠殺をし、CTにてブロック周囲の骨形成を評価、また電子顕微鏡および組織染色による評価を行った。 ハイドロキシアパタイトコーティングを実施した群では術後21週においてブロック外部において有意に高い骨形成率を認め、また電子顕微鏡観察でもブロック内部に有意に高い骨形成率が認められたが、組織標本において未処理群との差は明らかではなかった。チタンファイバーブロックと骨組織との接合強度を計測したところ、骨組織形成量に比例した強度が認められ、すなわち、ハイドロキシアパタイトコーティングを実施した群では有意に高い骨接合が認められた。 以上の結果より、チタンファイバーブロックは下顎骨再建材料として有用であり、ハイドロキシアパタイトコーティングを併用することによりさらに有効な顎骨再建材料に成り得ると考えられた。
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