研究課題
Tropomyosin receptor kinase (Trk)はTrkA、TrkB、ならびにTrkCが存在し、それぞれNGF、BDNF、NT3の高親和性受容体であるが口腔癌における役割はよく分かっていない。口腔癌細胞株を用いた検討では、TrkAはVEGF-Aの発現・分泌を、TrkBはVEGF-C/-Dの発現・分泌を調節しており、またTrk familyはcaspase-3を介したアポトーシスを制御し、TrkBは増殖能の獲得に、TrkCはMMP-2/-9を誘導することで浸潤能の獲得に関与することが明らかとなり、これらの機能の獲得にはそれぞれのリガンドが重要な役割を果たしていることを見出した。さらにRUNX3のメチル化が確認されたKON細胞ならびにHSC3細胞を脱メチル化することでTrk familyの発現が回復された。102例の口腔癌材料を用いた免疫組織化学的検討ではTrkBは血管・リンパ管新生に、TrkCは腫瘍の進展、リンパ節転移、ならびに血管・リンパ管新生に関与しており、TrkBないしTrkCを発現している症例は有意に予後不良であった。また遺伝子発現解析ではTrk familyとRUNX3の発現レベルは逆相関していた。あわせて大腸癌におけるTrkの役割を検討したところ、TrkBの発現は局所進展、リンパ節転移および腹膜播種と相関していた。一方肝転移症例ほど、非肝転移症例と比較して有意にTrkC陽性率が高かった。in vitroにおいてTrKB/C siRNA処理によりWiDr細胞の増殖能および浸潤能が抑制され、その際にTrkB siRNA処理ではVEGFの発現レベルが減少したのに対しTrkC siRNA処理によりTGF-beta signalの活性化が認められた。以上より口腔癌のみならず大腸癌の進展にもTrkが密接に関与していることが明らかとなった。
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