研究課題/領域番号 |
23792374
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
吉田 充広 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (40364153)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 神経障害性疼痛 |
研究概要 |
外傷性神経因障害性疼痛の発症・維持のメカニズムには不明な点が多く、顔面の侵害情報の伝達と調節に主に関わる三叉神経尾側亜核の神経―グリア相互作用を始め、未だ基礎的知見の集積がなされている現状である。本研究では、ラット下歯槽神経結紮モデルによる、顔面部難治性疼痛の発症・維持機構の解明を目標としているが、現在、安定した動物モデル作成に取り組んでる。また、一方で先行研究が多くある、ラット坐骨神経結紮モデルを使用して、基盤となる研究を進めている。 現在までの研究では、ラット慢性疼痛モデルに神経栄養因子誘導剤、NMDA受容体阻害薬、TrkB受容体阻害薬等を投与することで、慢性疼痛時における疼痛閾値の低下にはGlutamate神経の過剰伝達が大きく関与しており、神経栄養因子誘導剤の投与により疼痛に対する閾値の低下が緩和されることが明らかになった。また、神経栄養因子誘導剤の投与は、慢性疼痛に随伴する鬱症状を緩和することも示唆されてきている。このような結果から、慢性疼痛およびそれに併発がしばしば報告される情動障害の原因の一つとして中枢神経系における神経栄養因子不足が考えられ、この発症メカニズムには、細胞内のシグナル活性、神経・グリア細胞の関与を予想している。これら結果は、慢性疼痛に対する治療における神経栄養因子の補充療法の有効性が示唆されるものであり、臨床的にも非常に重要な知見の一つとなるものと考えられる。 今後は、ラット下歯槽神経結紮モデルの安定化をめざし、ラット下歯槽神経結紮モデルによる顔面部難治性疼痛の発症・維持機構の解明を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性疼痛の発症に関与するメカニズムは徐々に明らかになってきているが、安定的なラット下歯槽神経結紮モデルがまだ得られておらず、顔面部難治性疼痛での結果が得られていない。しかし、先行研究が多くある、ラット坐骨神経結紮モデルを使用して、基盤となる研究を進めており、慢性疼痛発症のには細胞内のシグナル活性、神経・グリア細胞の関与があることが明らかになった。また、慢性疼痛に随伴する情動障害には、神経栄養因子不足の関与が予想された。
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今後の研究の推進方策 |
外傷性神経因性疼痛を想定した安定したラット下歯槽神経結紮モデルが継続的に得られなかったため、一時実験を中断し、ラットの選定法、飼育条件、手術法等の面から検討を行い、モデル作成の安定化対策を行っている。現在、モデルは徐々に安定化してきていることから、今後、ラット坐骨神経結紮モデルで行ってきた研究を、ラット下歯槽神経結紮モデルに移行していく予定である。また、基盤的な研究として、ラット坐骨神経結紮モデルを用いたグリア関連蛋白の免疫染色を行い、病理学的な検討も行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
ラット下歯槽神経結紮モデルとラット坐骨神経結紮モデルを併用しながら、外傷性神経障害性疼痛の発症・維持のメカニズムを明らかにしていく。次年度では、薬理学的な検討に加え、病理学的な検討も加えていく。特に、神経障害性疼痛における細胞内のシグナル活性、神経・グリア細胞の関与に焦点を当て、グリア反応についてGFAP、OX-42などグリア関連蛋白を免疫染色し、陽性細胞の局在を経時的に観察していく。また、前年度の研究で、神経障害性疼痛に神経栄養因子不足が関与していることが予想されてたことから、ラット神経障害モデル神経栄養因子誘導剤(4-methylcathecol)の投与の検討を行い、治療法への検討への展開へつなげていく。
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