研究課題/領域番号 |
23792374
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
吉田 充広 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (40364153)
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キーワード | 神経障害性疼痛 |
研究概要 |
末梢神経損傷に由来する神経障害性疼痛は極めて難治性であり、その発症・維持のメカニズムには不明な点が多い。我々は、そのメカニズムの解明に向け、慢性疼痛状態における脳由来神経栄養因子不足に着目している。これまでの研究から、ラット慢性疼痛モデルに神経栄養因子誘導剤、NMDA受容体阻害薬、TrkB受容体阻害薬等を投与することで、慢性疼痛時における疼痛閾値の低下にはGlutamate神経の過剰伝達が大きく関与しており、神経栄養因子誘導剤の投与により疼痛に対する閾値の低下が緩和されることが明らかになっている。また、脳由来神経栄養因子不足は気分障害を引き起こすことが示唆されている。これらの知見をもとにして、本年度は、ラット慢性疼痛モデルに、脳由来神経栄養因子誘導剤である4-MC(4-メチルカテコール)を投与し、慢性疼痛に伴ううつ症状やFormalin疼痛に対する反応変化について細胞内のシグナル活性、神経・グリア細胞の関与の面から研究を進めた。本研究では、ラット下歯槽神経結紮モデルによる、顔面部難治性疼痛の発症・維持機構の解明を目標としているが、現在、安定した動物モデル作成に取り組んでる。また、一方で先行研究が多くあるラット坐骨神経結紮モデルを使用して、研究を進めている。 本年度の研究から、慢性疼痛におけるうつ様行動は痛覚-情動系のpERK/c-Fos活性化が関与することや4-MCは,慢性痛に併発するうつ様症状を,痛覚-情動系のBDNF誘導やERK/CREBリン酸化作用を介する細胞内シグナルの是正作用により改善することが判明した。BDNF誘導剤は,慢性痛に併発するうつ様症状に新しい治療戦略になりうる可能性を示唆する
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標とするラット下歯槽神経結紮モデルによる研究の遂行が、モデルの安定化が完全に得られていないため、なされていないが、ラット坐骨神経結紮モデルにおける慢性疼痛の発症に関与するメカニズムは明らかになってきている。ラット坐骨神経結紮モデルには、多くの先行研究があり、このモデルから得られる結果は、口腔顔面領域における慢性疼痛のメカニズム解明に応用可能と考えている。本年度はBDNF誘導剤が慢性痛に併発するうつ様症状を改善することが明らかになった。今後はさらなるラット下歯槽神経結紮モデルの安定化をめざし、ラット坐骨神経結紮モデルとの併用によって研究を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
慢性疼痛の発症に関与するメカニズムは徐々に明らかになってきているが、安定的なラット下歯槽神経結紮モデルがまだ得られておらず、顔面部難治性疼痛での結果が得られていないが、先行研究が多くある、ラット坐骨神経結紮モデルを使用して、基盤となる研究を引き続き進めている。これまでの研究から慢性疼痛時における疼痛閾値の低下にはGlutamate神経の過剰伝達が大きく関与しており、また、神経栄養因子不足が疼痛閾値の低下や慢性疼痛に伴ううつ症状の発症に関与していることが明らかになった。今後は、GABA-A神経系や神経-グリア相互作用にも着目し、検討を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
ラット下歯槽神経結紮モデルとラット坐骨神経結紮モデルを併用しながら、外傷性神経障害性疼痛の発症・維持のメカニズムを明らかにしていく。また、外傷性神経障害性疼痛におけるアロディニアに着目し、その発症のメカニズムをGABA-A神経系や神経-グリア相互作用の面から解明していく。ラット下歯槽神経結紮モデルについては、さらなる検討を加え安定化を目指していく。
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