研究課題/領域番号 |
23792376
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
土生 学 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (00360058)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 慢性顎関節炎 / 抗サイトカイン療法 / 超音波遺伝子導入法 / ナノバブル / 顎関節炎モデル |
研究概要 |
申請者は難治性慢性顎関節炎の治療のために抗炎症性サイトカイン発現遺伝子を顎関節局所に超音波遺伝子導入法を用いて直接導入する方法を検討している.研究の特徴としては,遺伝子の運搬体により直径の小さい超音波造影ガスを封入した新規リポソーム(ナノバブル:400~500 nm)を応用し,深部組織への導入効率を増強することで,慢性顎関節炎治療に有効なサイトカイン濃度の発現を目的としている点である. 本年度の計画は1)in vitroの系で滑膜細胞に効率良く抗炎症性サイトカイン発現遺伝子(抗TNF-α抗体発現遺伝子)を導入させる条件の確立,および2)正常ウサギ顎関節での抗TNF-α抗体発現を確認する,であった. 結果として1)in vitoroにて効率のよい超音波の出力,照射時間,バブルリポソームの混入量,表面抗原(CD44)に対する抗体の混入比率を検討し,抗TNF-α抗体発現遺伝子の滑膜細胞への導入効率を20%以上となる条件を確立した.しかしin vivoの実験2)にて正常ウサギ顎関節滑膜細胞での抗TNF-α抗体発現は確認されたものの,治療効果の得られる抗TNF-α抗体の顎関節局所濃度1.04×100000 M/ml以上の濃度を安定して検出できなかった.これは,関節滑液の採取方法に問題がある可能性があるため,再度採取方法および検出方法を検討する必要がある.また,さらに導入効率を上げる方法としてナノバブルに付着させる滑膜表面抗体を変更することも視野に検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定としてin vitoroの結果より,in vivo系にて安定した導入遺伝子の発現が得られる予定であった.しかし,導入遺伝子の発現は認められたものの,サンプルから検出された目的たんぱく質量が予想より安定していなかった.今後,動物からサンプルの採取方法を検討するとともにより効率のよい遺伝子導入方法も検討する必要がある.具体的には,サンプル採取方法として希釈式の顎関節滑液採取方法を検討することや導入効率を上げる方法としてナノバブルに付着させる滑膜表面抗体を変更することも検討する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
次年度の予定として,疾患モデルであるウサギ慢性顎関節モデル上での抗TNF-α抗体発現とその効果を確認することが最大の目的であるが,本年度の結果として正常ウサギ顎関節内での安定した抗TNF-α抗体発現方法の確立とその検出方法の検討が優先される.そのため,次年度は遺伝子導入効率のさらなる向上のためナノバブルに付着させる滑膜表面抗体を変更することを検討し,サンプル採取方法もより安定した採取方法である希釈式を検討したい.その上で顎関節炎疾患モデル上での抗炎症性サイトカイン抗体遺伝子導入による関節炎の抑制効果を動物の体重変化,関節の腫脹,滑液中の炎症性サイトカイン量,関節の病理組織学的ならびに免疫組織化学的所見にて評価を行うことを目的とする.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究における設備備品は,既存の備品を使用するが,超音波遺伝子導入装置システムにおける超音波プローブについては,既製の血管用プローブ(KP-6)のオリジナルの改良型(350千円)を新規購入使用する.実験用消耗品,実験動物および飼育費で占められる.実験用消耗品は実験精度維持のため新規購入の必要があり,550千円程度を見込んでいる. 旅費については,国内および海外での学会発表や参加費,滞在費を含み,200千円程度を見込んでいる.
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