研究課題/領域番号 |
23792378
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
日野 純 北海道医療大学, 歯学部, 助手 (20508709)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 生体材料 / 材料加工・処理 / セラミックス / 移植・再生医療 / 骨膜上骨誘導 |
研究概要 |
既存の非吸収性ハイドロキシアパタイト(HAp)を改良して骨成長因子の保持力を増大し骨誘導能を向上させることを目的とし、HApに超音波部分溶解析出処理(Partial Dissolution-Precipitation technique)を行った。 HApブロック(アパセラム-AX、HOYA、東京)を同HAp細粒が完全溶解している硝酸水溶液中に含浸し超音波で部分溶解を行った。アンモニア水を滴下し熟成して析出処理を行い、濾過、蒸留水で洗浄後、乾燥し超音波部分溶解・析出処理を施したHAp(PDP-HAp)の完成とした。SEM像では未処理HApが比較的平らな表面構造であるのに対し、PDP-HApはミクロ気孔やマイクロクラックを生じ、表面に針状微細結晶が多数析出していた。超音波処理時間を25分、30分、35分と変更したところ、35分処理では原型をとどめないまでに細分化され、25分処理と30分処理との比較では、SEM像で30分処理の方がより広範囲にマイクロクラックを生じており、30分を処理時間として設定した。 実験群:PDP-HAp、対照群:未処理HApのそれぞれ4×4×4mmブロックにrhBMP-2(1μg)を添加したものを、Wistar系ラット(雄性、4週齢)の頭部骨膜上へ埋入し、1、2、4、8週後に安楽死させ摘出し組織学的観察を行った。 実験群および対照群のどちらも1週後は骨形成を認めず、2週後は一部の辺縁部気孔内に骨形成を認めた。4、8週後は実験群では新生骨の形成範囲が徐々に増大し、中心部にかけても一部の気孔内に骨形成を認め、形態計測で4、8週後において有意に骨形成範囲が広範囲におよぶことが確認された(student's t検定、p<0.05)。 以上よりHApに超音波部分溶解・析出処理を施すことでBMP-2添加時の骨誘導能が改良されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
骨形成範囲に関して埋入4、8週後では有意差がみられたが、1、2週後においてはほとんど差がみられず、またHApの吸収性に関しても著明な差が確認できず、その原因として現在の処理方法では、(SEM像の観察において)構造の変化した部分が表層のみに認められ、深部にまでは構造の変化がおよびにくいとみられ、埋入初期から著明な差がでるよう、より深部まで構造が変化していくような処理方法の改良や埋入方法の変更などが、さらに今後必要と思われるため。
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今後の研究の推進方策 |
超音波処理時間などを調整したり、加工するブロックサイズおよび埋入方法についても考察し、体液がより中心部にまで浸透しやすく、また吸収もされやすくなる処理方法についてさらなる改良を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在の処理方法で調製したHApの長期埋入での評価を行うとともに、超音波処理時間を含めた様々な処理方法についての実験をまずは行っていく。その後に、最良の処理方法で改良したHApブロックを用いて、BMP-2を添加してできた誘導骨の移植実験を行っていく。
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