研究概要 |
既存の非吸収性ハイドロキシアパタイト(HAp)を改良して骨成長因子の保持力を増大し骨誘導能を向上させることを目的に、超音波部分溶解・析出処理(Partial Dissolution - Precipitation technique)を施したHAp(PDP-HAp)を調製した。 前年度はBMP-2を添加しラットの頭部骨膜上へ埋入した際に埋入物中の骨形成範囲が未処理のものに比べ、4、8週後においてより広範囲で認めることを確認したが、8週後も埋入物全体的に骨形成を認めず、HApも全て吸収されておらず、最終年度はPDP-HApにBMP-2を添加し長期埋入した際の骨誘導とHApの吸収性について組織学的に観察し単独で埋入したものと比較した。 PDP-HAp(3×3×3mm)にrhBMP-2(1μg)を添加したBMP-2添加群と、PDP-HAp(3×3×3mm)単独群とを、それぞれWistar系ラット(雄性、4週齢)の頭部骨膜上へ埋入し、3,6,9か月後に安楽死させ摘出し組織学的観察を行った。 BMP-2添加群の3か月後の骨形成範囲は埋入物中の約55%程であった。その後、徐々に骨形成範囲は拡大し9か月後で約91%となった。しかしHApは全て吸収されずに残存した。これは、これまでの処理条件では深部まで構造の変化が生じていないためであると考えられ、より深部まで構造が変化し少量の細胞増殖因子の添加で早期に骨形成が生じ、HApが速やかに吸収・置換されるように処理方法をさらに改良する必要があると思われた。また、単独群では3,6か月後では骨形成を認めなかったが、9か月後に一部に新生骨を認め、HApを単独で犬やヒヒなどの大型動物の筋肉内に埋入した際に骨誘導を生じた報告はあるものの、小動物での報告はなく、ラットのような小動物の頭部骨膜上という異所性の実験環境でも骨誘導を生じることが示唆された。
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