研究概要 |
本研究では、正常上皮組織から癌が発生していく過程(正常上皮→異形性→前癌病変・前癌状態→癌)と同時に進行していると予想される癌周囲間質細胞の悪性転化メカニズムを解析するため、以下の研究項目を計画した。1, ヒト扁平上皮癌移植マウスに発生した癌組織から、腫瘍間質を構成する間葉系細胞分画の特異抗原を指標としたフローサイトメトリー(FCM)による解析。2, 癌組織中の間葉系細胞分画における血管新生、リンパ管新生、炎症性因子の検索。3, 血管新生因子、リンパ管新生因子、炎症促進因子に対する中和抗体、あるいはノックダウン法によって腫瘍の進展を抑制できるかをin vitroおよびin vivoにて調べる。4, ヒト前癌病変、前癌状態、口腔扁平上皮癌における癌細胞周囲間質細胞の同定と、癌の生存・増殖・浸潤・転移促進因子の解析。5, ヒト前癌病変、前癌状態、口腔扁平上皮癌切除標本における悪性間質細胞と血管・リンパ管新生および炎症関連タンパク質の発現領域の解析。 平成23年度は上記1を達成した。研究計画1は本研究計画を進めていく上で毎回行う実験手技であり、非常に重要な条件検討であった。癌組織の周囲間質細胞をいかに生存率高く維持した状態で実験を進めていくのかを検討した。その結果、FCMで癌周囲間質細胞と癌細胞を高い生存状態で解析段階に移行させるとともに、適切な抗体染色方法と抗体染色の組み合わせを決定することができた。 平成24年度はヒト口腔癌手術検体からFCMを用いて、培養を経ずに上皮細胞、間質細胞に分類することに成功した。このことは今後癌細胞のみに限らず、これまで解析する必要があってもマーカーが存在しないために解析困難であった癌関連線維芽細胞、癌周囲間質細胞の解析が間葉系幹細胞のマーカーを用いることで可能となったという点で重要な知見になると考えている。
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