研究課題/領域番号 |
23792385
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
恩田 健志 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (30433949)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 / プロテオミクス / 2D-DIGE / LC/MS/MS |
研究概要 |
本研究では口腔扁平上皮癌細胞が発現異常を示す分泌タンパク質を解析し唾液・血液等から分泌異常が検出可能な口腔扁平上皮癌の有力な分子マーカーの同定を試みた。表皮角化細胞株、口腔扁平上皮癌由来細胞株(6株)、および各々の培養液を使用した。2D-DIGE法、LC/MS/MS法を用いて口腔扁平上皮癌由来細胞株およびその培養液に共通して発現異常が認められるタンパク質を解析した。リストアップされたタンパク質群については、GO Slim機能解析、およびPathway解析を行った。同定したタンパク質群からSwiss-Protデータベースを用いて分泌タンパク質をリストアップした。2D-DIGE法の結果、表皮角化細胞と比較して口腔扁平上皮癌由来細胞株に共通して統計学的に有意に発現亢進を示すタンパク質は49スポット、共通して発現低下を示すタンパク質は77スポット認められた。これら126スポットを質量解析し、翻訳後修飾などの影響で重複したものを除く92種類のタンパク質を同定した。GO Slim機能解析の結果、リストアップされたタンパク質群の局在は細胞全体が最も多かった。分子機能では結合に関与するタンパク質が多かった。また既知の遺伝子ネットワークにアクセスした結果、29の既知pathwayがヒットした。分泌タンパク質はSYK、ANXA2、AMBPの3種類であった。培養液中のタンパク質の比較では統計学的に有意な発現異常タンパク質39スポットのうち36スポットはウシ血清由来でありヒト由来のタンパク質はJHD2C、PRSS3、TM14Eの3種類であった。今回、口腔扁平上皮癌細胞の6種の分泌タンパク質の異常が検出された。JHD2C、TM14Eについては報告がなく未知のタンパク質であるが新規分子マーカーとなる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の実験計画は以下の通りであった。(1)正常口腔粘膜表皮角化細胞と口腔扁平上皮癌由来細胞株を蛍光標識二次元電気泳動法(2D-DIGE)を用いて網羅的にタンパク質発現解析を行う。(2)口腔扁平上皮癌由来細胞株に共通して発現亢進しているタンパク質スポットを質量分析し、ペプチドマスフィンガープリンティング法にて同定する。(3)正常口腔粘膜由来表皮角化細胞の培養液と口腔扁平上皮癌由来細胞株の培養液を2D-DIGE法を用いて網羅的にタンパク質発現解析を行う。(4)口腔扁平上皮癌由来細胞株の培養液に共通して発現亢進しているタンパク質スポットを質量分析し、ペプチドマスフィンガープリンティング法にて同定する。(5)(1)(2)でリストアップした口腔扁平上皮癌細胞に共通して発現亢進しているタンパク質でありかつ(3)(4)でリストアップした口腔扁平上皮癌由来細胞株の培養液中でも発現亢進しているタンパク質が、口腔扁平上皮癌細胞が、特異的に培養液中に分泌しているタンパク質であることが期待できる。(6)(5)のタンパク質をWestern blotting法により、抗体を用いた確認実験を行う。であった。口腔扁平上皮癌由来細胞株とその培養液に共通して発現亢進しているタンパク質は同定できなかったが、口腔扁平上皮癌由来細胞株に共通して統計学的に有意に発現亢進を示すタンパク質を49種類、共通して発現低下を示すタンパク質は77種類の126種類を質量解析し、翻訳後修飾などの影響で重複したものを除く92種類のタンパク質を同定できたこと。また培養液中のタンパク質の比較では統計学的に有意な発現異常タンパク質39種類のうち36種類はウシ血清由来でありヒト由来のタンパク質はJHD2C、PRSS3、TM14Eの3種類のみであったが、目的の候補タンパク質を多数リストアップすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年の研究計画としては以下の通りである。(1)今回リストアップできた候補タンパク質が口腔癌患者の唾液、血液から検出可能か検討する。実際に検体を用いた解析となる。Western blotting法による抗体を用いて、健常者全唾液、口腔癌患者の手術前の全唾液、手術後3カ月の全唾液、手術後6カ月以降の全唾液から候補タンパク質が検出可能か解析する。期待する目的タンパク質は、健常者全唾液からは検出されず、口腔癌患者の手術前の全唾液からは検出され、さらに腫瘍切除術術後の全唾液からは検出されなくなるタンパク質であり、このようなタンパク質を多数リストアップし、診断用キットの作成に利用する。(2)同定した候補タンパク質群についてパラフィン包埋手術検体を用いて抗体による免疫組織化学染色を行い、タンパク質の局在と口腔扁平上皮癌組織での発現亢進を確認する。また、手術時に採取した臨床検体より直ちにmRNAおよびDNAを採取し、定量的Real-Time PCR法を用いて、口腔扁平上皮癌組織のmRNAの発現亢進、DNAのコピー数異常を確認する。(3)さらに抗体を用いてWestern blotting法により検体数を増やして全唾液中のタンパク質発現状況を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年の研究費の使用計画はプラスチックウェアー類、一般核酸用試薬、抗体用試薬などの消耗品がほとんどである。残りは論文作成費用、国内外学会出張旅費等である。設備品などの購入予定はない。
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