研究概要 |
【研究目的】顔面神経欠損には自家神経移植が主になされているが、それに代わる治療法としてチューブによる神経誘導管の開発・臨床応用が進んでいる。しかしチューブ単独では長い神経欠損の再生は制限され、チューブにSchwann細胞や神経前駆細胞などを組み込んだ人工神経がその打開策であると考えられている。しかし、脳などの神経組織からそれらの細胞を採取し利用することは外科的侵襲の大きさなどから困難であることが予想される。そこで本研究では、歯髄に着目し、ミニブタ歯髄細胞を組み込んだ神経誘導管によりミニブタ顔面神経を再生させることを目的とした。【結果および考察】プロポフォールを用いた静脈鎮静下に、ミニブタの下顎切歯の抜歯を行い、切歯から歯髄の採取を行った。次に歯髄組織をミンチ状にし、Collagenase (Serva) 10PZ-U/mlおよびDispase (Godo-syusei) 10000PU/ml処理を行い、ミニブタ歯髄細胞混濁液を作成した。ミニブタ歯髄細胞(300,000個)をType Iコラーゲンゲルに混和、30 mmのシリコンチューブ(内径3 mm、外径 5mm)内に注入しミニブタ歯髄細胞を組み込んだハイブリッド型の神経誘導管を作成した。そして、同ミニブタにセボフルレンによる全身麻酔を行い、顔面神経下顎縁枝欠損の作成および同神経誘導管移植を行った。下顎後部から顎下部切開を行い、顔面神経下顎縁枝を露出させた。30 mmの顔面神経下顎縁枝欠損を作成し、両断担に7-0ナイロン糸を用いて2糸ずつマットレス縫合を行い神経誘導管を移植した。術後15週の評価において、神経誘導管は瘢痕組織に覆われ、神経断端を架橋しているものの、チューブ内に再生神経は確認できなかった。チューブの形態、内径、移植した歯髄細胞数が影響しているものと考えられ、条件のさらなる検討が必要がある。
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