研究概要 |
α2受容体作動薬であるDexmedetomidine (DEX)は,局所投与では末梢血管に存在するα2B受容体の作動薬として血管を収縮させるが一過性の高血圧を呈する.また,全身投与では血圧低下と徐脈を引き起こす.以上よりDEXの循環動態に対する作用は複雑である.今後,DEX添加リドカインの臨床応用を目指すには,DEXが循環動態に影響を与えず,リドカインの局所麻酔効果を増強させることを証明する必要がある.そこでわれわれはDEXがリドカインの局所麻酔作用と循環に与える影響を通常ラットと高血圧ラットを用いて解析した. Wistar系およびSHR/Izmの雄性ラットを対象とした.実験対象薬剤として生理食塩水(NS),2%リドカイン(L),1/80000アドレナリン添加2%リドカイン(AL),0.5μg/kg DEX添加2%リドカイン(DL)を使用した.局所麻酔作用持続時間および循環動態の検討はHummock methodを使用した.高血圧ラットに対する循環動態の検討は対象薬剤を腹腔内投与し,Tail cuff methodで行った. DL局所投与時の後足逃避行動までの反応潜時はL投与時に対して有意に延長した.また,DL局所投与時の収縮期血圧,拡張期血圧および脈拍は著変を示さなかった.本結果から,正常ラットに対してDEXは循環動態を変化させずにリドカインの局所麻酔作用を延長させることが観察された.高血圧ラットに対しALを腹腔内投与すると,一過性の収縮期血圧上昇を呈するが,DL投与では有意な変化は見られなかった.DL腹腔内投与は脈拍数において減少傾向を示し,投与10分後までNSに対して有意な差を示した. 以上より,本実験結果において,0.5μg/kg DEXは高血圧ラットの血圧を抑制しないとの結果を得た.
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