本研究では、医療廃棄物となる抜去歯の歯髄幹細胞により作製した細胞シートを再生医療に応用することを目的とする。これまで、20歳から30歳までの患者30名の抜去智歯より歯髄幹細胞を分離・培養を行い、幹細胞の性質があることを確認した。また、この細胞が、神経、骨、軟骨に分化することを確認し、凍結保存しても細胞の性質に変化がないことも確認した。まず、歯髄幹細胞から骨組織再生のための細胞シートを作製し、動物実験にて骨再生の可能性を証明した。次に、軟骨組織再生のために軟骨細胞シートを作製し、その特性について検討した。その結果、歯髄幹細胞から作製した軟骨細胞シートは軟骨関連タンパクを発現し、遺伝子発現においてもType II collagen、Aggrecan、SOX 9の発現を認めた(第23回日本口腔内科学会にて発表)。本年度では、まず、軟骨細胞シートが生体内でどのような挙動を示すか検討するために、免疫不全マウスの皮下に移植して観察した。移植後6週では、軟骨細胞シートは白色弾性軟の組織を形成し、これを組織学的に検討すると、アルシアンブルー染色に陽性で免疫組織化学的手法により軟骨関連タンパクの発現を示した。このことから、生体内においても軟骨細胞シートは軟骨の性質を維持していることが示された(第13回日本再生医療学会総会にて発表)。さらに、この細胞シートをマウス膝関節の軟骨欠損部に移植して欠損部の再生能について検討した。移植後6週では、移植した細胞シートは皮下移植実験と同様に軟骨関連タンパクの発現を示し、軟骨の性質を維持していたが隣接軟骨のように肥大軟骨層の形成までは認められなかった。今後の研究により、肥大軟骨層の再生が可能となるように検討を行う予定である。
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