研究課題/領域番号 |
23792395
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
金田 一弘 大阪歯科大学, 歯学部, 研究員 (90533886)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 虚血心筋 / 心筋保護 / エタノール / シグナル伝達 / アポトーシス |
研究概要 |
【目的】エタノール(EtOH:E)の虚血心筋保護効果はadenosine A1受容体を介し,protein kinase C (PKC)の活性化で発現する1)ことがわかっている(EtOH心筋プレコンディショニング:EtPC).我々はセボフルランが低濃度EによるPC様作用を増強し,PKC, ミトコンドリアKATPチャネルの活性化,およびEによるnitric oxide synthase(NOS)の発現増強が関与することを明らかにした.PCではbradykinin受容体(BR)の関与が明らかとなっている.bradykininはNOS刺激作用を有することからEtPCにおいてもBRの関与が考えられる.今回,我々はEtPCにおいてBRの関与をBRの阻害薬であるHOE-140を用いて検討した.【方法】モルモットのLangendorff灌流心で全群に30分間虚血(I),120分間再灌流 (R)し,これを対照群(C)とした.5%EtOHを8週間摂取させPCを誘発した群(E),およびEにHOE-140(100 nM)(H),CにHを虚血前15分間灌流しBRの関与を検討した(E+H,C+H).左心室圧 (LVDP),左室拡張終期圧 (LVEDP),冠灌流量およびR後の心筋梗塞サイズ (IS)を比較した.【結果】LVDP,LVEDPはEで改善し,IS縮小効果が観察された.この効果はbradykininの阻害薬の虚血前投与により消失した.【結論】bradykininの阻害薬の虚血前投与によりEtPC は消失した.EによるNOS発現増強および心筋PC様作用にはBRの関与が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今後,Western Blot法によりGSK3β,Akt,eNOS,iNOS,ERK 1/2の発現を観察する.
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今後の研究の推進方策 |
Western blot法,免疫組織化学染色によるシグナル伝達物質の発現の検討上記の虚血再灌流実験およびHOE-140,L-NAME投与下にてそれぞれ虚血前,虚血中,虚血後に心筋を採取しGSK3β,Akt,eNOS,iNOS,ERK 1/2の発現をWestern Blot法,免疫組織化学染色により検討する.これらはIPCにおけるRISK cascadeの重要なシグナル伝達物質であり,アルコールによる虚血心筋保護にも関与するか否かが判明する.
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次年度の研究費の使用計画 |
アポトーシスの関与の検討1)Western blot法によりアポトーシスのシグナル伝達物質として抗アポトーシス作用のあるBcl 2,アポトーシスに促進的に働くBax,p38 MAPKのdownstreamであるMAPKAPK2, Heat shock protein 27の発現を検討する.エタノール群とHOE-140,L-NAME投与下における組織で比較検討する.2)TUNEL染色によるアポトーシス細胞の検出とDNA ladderによるDNA断片の検出:再灌流終了後,心臓をホルマリン固定する.パラフィン包埋後,4の切片を作成する.次にApoptosis Kitを用いてTUNEL染色を行う.同様のサンプルを用いDNA ladder法によりDNA断片の検出を行う.これを1)で得られたシグナル伝達物質の発現結果と合致するかどうか検討する.3)Caspase 3活性の測定:蛍光基質(DEVD-MCA)を用いてアポトーシスのシグナル伝達の最終酵素であるCaspase 3 活性を測定する.4)電子顕微鏡によるアポトーシス細胞の検出:アポトーシス細胞の特徴とされる細胞の萎縮,核クロマチン凝集,細胞内小器官の形態学的性状などの超微構造をCTL群,EtOHプレコンディショニング群,EtOH+HOE群,EtOH+L-NAME群で比較検討する.
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