研究概要 |
【目的】エタノール(EtOH)の心筋保護効果はadenosine A1受容体を介し,PKCを活性化させることで発現される(エタノール心筋プレコンディショニング:EtPC).昨年,EtPCはBradykinin B2(BRB2)受容体の活性化が重要であることを拮抗薬であるHOE-140を用いて報告した.Bradykininはnitric oxide synthase(NOS)の刺激作用を有する.一方,我々は以前に慢性EtOH摂取によりendothelial NOSの発現が増強することを報告した.心筋PCにおいてnitric oxide(NO)はシグナル伝達として重要な役割を果たすことが報告されている.そこでEtPCにおいてNO測定器(inNO-T nitric oxide sensor)を用いてNO産生量を測定し,その関与を検討した. 【方法】モルモットLangendorff灌流心を用い、全群で30分間虚血,30分間再灌流(R)を行った.5%EtOHを8週間摂取させPCを誘発した群(E),EにHOE-140(100nM)(E+H),CにHを虚血前15分間灌流した群(C+H)を作成した. inNO-T nitric oxide sensorを用い,冠灌流の排出液におけるNO測定を虚血前,再灌流後において連続的に測定し,各群で比較検討した. 【結果】 NO産生量は虚血前,再灌流後ともにE(133.3±192 nM at R 30min)ではC(43.9±6 nM at R 30min)より有意に増加した.これはHの投与で減少した. 【結論】NOはシグナル伝達として働くことがわかっている。以前の我々のデータから、本実験におけるEtOH心筋でのNO産生量の増加はシグナル伝達として働いたと思われる. EtPCではBRB2を介し,NO産生を増加させ,その保護効果を発現していると考えられる.
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