ウサギ皮下脂肪を採取し、天井培養法を用いて脱分化脂肪細胞(DFAT cells)を樹立した。DFAT cellsをチタンファイバーメッシュに播種し、骨分化誘導培地中で14日間培養した。電子顕微鏡による観察から、DFAT cellsはチタンファイバーメッシュ中で生着、増殖し、DFAT cells周囲には石灰化物の析出が認められた。またDFAT cells/チタンファイバーメッシュに含まれるオステオカルシンやカルシウムの発現量は培養開始から14日目に有意に上昇し、骨芽細胞へ分化したことが示唆された。 続いて口腔外科手術時に頬脂肪体を採取し、遠心分離操作により頬脂肪体を成熟脂肪細胞とストローマ分画(SVF)に分離した。成熟脂肪細胞から天井培養法を用いてDFAT cellsを、またSVFをフラスコに播種し、脂肪組織由来幹細胞(ASC)を獲得した。DFAT cellsとASCを12ウェルプレートにそれぞれ播種し、骨分化誘導培地、またはコントロール培地にて14日間培養した。 骨芽細胞分化マーカーである骨型アルカリフォスファターゼ、オステオカルシン、カルシウム発現量は骨分化誘導培地で培養したDFAT cellsにおいて、同培地で培養したASCと比較して有意に高い値を示した。またアリザリンレッド染色では骨分化誘導培地で培養したDFAT cellsのプレートにおいてASCと比較して、カルシウムの沈着を示す赤く染色された範囲は大きかった。以上の結果からDFAT cellsはASCと比較して骨芽細胞分化能が高い細胞であることが示唆された。 DFAT cellsの骨再生用ドナー細胞としての優れた特徴を明かにした上記の研究の意義は大きいと考えている。
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