IgG4関連多臓器リンパ増殖性疾患(IgG4+MOLPS)は日本発の疾患概念であり、本研究の目的は免疫グロブリン遺伝子を分子病理学的に解析することによってIgG4+MOLPSが自己免疫の特徴をもつのか明らかにするすることである。 研究項目は①IgG4+MOLPSで選択されている免疫グロブリン遺伝子クローンを明らかにし、体細胞変異率を自己免疫疾患や慢性炎症疾患と比較検討する。②自己免疫疾患に特徴的なRF因子を免疫グロブリン遺伝子可変領域で明らかにする。③制御性T細胞の解析を予定した。最終年度ではIgG4+MOLPSの免疫グロブリン遺伝子可変領域でRF因子の有無を再検討したが確認できなかった。③制御性T細胞の解析においては検体から抽出したDNAの精度の問題もあり、有意義な結果は認めなかった。 本研究期間でIgG4+MOLPSは自己免疫疾患であるという仮説のもとに研究を実施したが、①IgG4+MOLPSで選択されている免疫グロブリン遺伝子クローンの比較、体細胞変異率の比較では、免疫グロブリン遺伝子のクローンに特徴的なものは認めなかった。体細胞変異率は慢性炎症疾患と比較検討すると、体細胞変異率が2%以下のものが2割ほど多く自己免疫疾患と類似する結果であったがRF因子などは認めなかった。本研究で得られた結果から考えると、IgG4+MOLPSは自己疾患疾患との関連性を強く支持するものは認められなく自己免疫疾患の可能性は低いと考えられた。
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