摂食は全ての動物に共通する、生命維持に必要な栄養素を摂取する行為である。個々に見合った適切な量と質の食物を摂取するために摂食を調節する機構は健全な発育や健康に生きる上で重要である。本研究では、野生型マウスの脳において、摂食調節に関わる分子の発現細胞・細胞内局在を、組織学的手法を用いて解析し、摂食調節に関与する分子の機能的役割を明らかにすることを目的として行った。平成24年度は、摂食調節に関わる脳内部位のうち、満腹中枢として知られている視床下部腹内側核で検討した。その結果、摂食促進ペプチドとして最近知られるようになったセレベリン1(Cbln1)のmRNAが腹内側核に発現し、一部小胞膜型グルタミン酸トランスポーターVGluT2と共発現していた。一方、Cbln1のmRNA発現細胞は抑制性シナプスのマーカーであるGAD67のmRNAとは陰性だった。平成23年度の結果より、この腹内側核において、脳内マリファナとも言われる内因性カンナビノイドの受容体のひとつであるCB1のmRNAとVGluT2のmRNAは一部共発現していた。また、腹内側核において、CB1のmRNAとCbln1のmRNAも一部共発現が認められた。CB1はこれまで、摂食抑制ペプチドとして知られるレプチンによってその合成が抑制されて、視床下部ニューロンの摂食行動を抑制することが示唆されていた。今回、Cbln1とCB1のmRNAが一部共発現することが新たに確認できたので、Cbln1とCB1がグルタミン酸作動性の同じニューロンに発現し、摂食行動の調節に関与している可能性が示唆された。
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