本研究は、エナメル質の主要なタンパク質であるアメロジェニンが、間葉系細胞の分化にどのような影響を与えるかを解析することによって、アメロジェニンタンパクの細胞間のシグナル伝達物質としての役割を解明し、アメロジェニンの2つの主要なアイソフォームであるM180、LRAPの機能の違いを検証することを目的としている。 平成24年度は、マウスM180およびLRAPタンパク発現ベクターを作製後、FreeStyle293-F細胞にトランスフェクションを行い、10日間振盪培養を行った。得られたアメロジェニンタンパク含有培地を濃縮し、これを分化培地に一定の割合で添加した培地を用いてMC3T3-E1細胞、ATDC5細胞の培養を行い、アルカリフォスファターゼ(ALP)活性、石灰化ノジュール形成、骨芽細胞および軟骨細胞分化マーカーの遺伝子発現変化について解析した。 その結果、①MC3T3-E1細胞において、M180とLRAPは骨芽細胞分化マーカーの遺伝子発現を上昇させた。②M180とLRAPは、ATDC5細胞のALP活性、軟骨基質分泌を促進した。③ATDC5細胞において、M180とLRAPはAlkaline phosphatase、Aggrecan、Col10a1、Osteopontinの遺伝子発現を上昇させた。 以上のことから、2つのアメロジェニンアイソフォームM180、LRAPは、軟骨細胞株ATDC5細胞のALP活性の上昇と、軟骨基質の分泌を促進させ、軟骨細胞の分化を促進させることが示唆された。
|