研究課題/領域番号 |
23792419
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
宮本 順 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 助教 (10451949)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 咀嚼 / 口腔 / fMRI |
研究概要 |
本研究の目的は、ヒト脳機能の咀嚼運動制御に関して、機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging: fMRI)を用いて解明することである。咀嚼運動に限らず、運動制御における大脳皮質の役割を調べるためには、その脳活動が何に起因するかを特定するため、運動条件を規定して研究を行うことが必須である。しかしながら、咀嚼運動制御に関するfMRI研究においては、MR環境下という特殊な実験環境に制限され、咀嚼運動中の咬合力または咀嚼筋活動の測定と、脳機能活動測定を同時に行ったものは皆無であった。これらの同時計測が達成された場合、咬合力や咀嚼筋活動の条件を規定することが可能となるため、変動するパラメータを減らし、結果の解釈に主観的要素が介入することを防げるという意義がある。そこで平成23年度は、咀嚼運動中のfMRI-筋電図の同時計測に取り組んだ。さらに、「咬合力依存性の大脳皮質賦活部位の検索」および「前歯/臼歯部咬合の違いによる咀嚼運動時の神経機構の同定」を目標に、研究を遂行した。研究の成果としては、fMRI撮像に伴い、筋電図データに生じるアーティファクトの除去を行うこと、また、咀嚼運動中のモーションアーチファクトによる、fMRIデータへの影響を最小限にとどめることにより、信頼できるデータ採得が可能となった。また、咬む力の定量化、つまり脳機能活動測定中の咀嚼筋活動の条件を規定することが可能となった。さらに、咀嚼運動中の脳活動部位は、前歯・臼歯部咬合によって違いがあることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
I)咀嚼運動中のfMRI-筋電図同時計測における、信頼できるデータ採得、II)同時計測により採得した咀嚼筋筋電図の定量化、III)前歯・臼歯部咬合による脳活動部位の同定に関しては、おおむね順調な進展だったと考えられる。しかしながら、咬合力依存性の大脳皮質賦活部位に関しては、該当箇所の検索を行ったが、その存在に関して結論づけるには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
基礎研究的な観点からの研究を遂行・完了するため、咬合力依存性の大脳皮質賦活部位に関して、引き続き解明していく。その対応策としては、筋電図データの処理方法を改良し、そのデータを脳賦活部位解析のパラメータとして用いる予定である。MR環境下という磁性体や電流を使用できない特殊な状況下で使用可能な「咬合力測定器」を開発することを、今後の研究目標としているが、新しく「咬合力測定器」が開発された際は、その測定器にて採得されたデータと、既存の信頼できるデータの相関性について検討することが必須となる。本研究における既存の信頼できるデータとしては、筋電図データが該当すると考えられるため、筋電図データの処理方法を改良することは、今後の課題を遂行する上でも最優先事項であり、これを達成した後に新規測定器の開発を行っていく。また、臨床応用できる研究課題として、「咬合状態の改善が四肢筋力に与える影響の同定」も目標とし、研究を遂行していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として、I)データ保存用ハードディスク、II)視覚提示用ソフトウェア等に研究費を使用する予定である。I)に関しては、fMRIおよび筋電図の同時計測を行うと、一人の被験者につきおよそ500枚のMR画像データと、サンプリング周波数1000Hzで、4箇所の咀嚼筋からの筋電図データがおよそ45分間相当分得られる。そのデータ解析上、元データに処理をかけた分データが倍増していくため、保存するハードディスクが必要不可欠なものである。II)に関しては、実験中被験者にタスクを指示するためには、MRマシーンの稼動と時間的に統一された指示を与える必要がある。そのためには専用の視覚提示用ソフトウェアが研究期間を通じて必要となる。また、新規測定器開発を開始した場合は、圧力変換機等を購入する予定である。さらに、研究調査・打ち合わせ、また研究成果の発表等の旅費として、研究費を使用することも必須であると考えられる。なお、今年度研究費のうち、次年度に使用予定の研究費はない。
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